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低軌道衛星を使った通信サービス「Starlink」が日本上陸。KDDIが法人向けサービスを提供予定

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大量の低軌道衛星を使い、高速なサービスを実現している

米国の起業家イーロン・マスクが率いるSpaceXは、10月11日に日本で「Starlink」を開始しました。Starlinkとは、低軌道衛星を使って携帯電話の基地局がないへき地や山間部、海上などでの通信を提供するサービス。

衛星を使った通信は以前から存在しましたが、音声通話や低速のデータ通信に限定され、コストがかさむのが一般的でした。これに対し、Starlinkは数百Mbpsの速度が出るブロードバンドサービス。これまで通信が利用できなかった場所にもネットを行き渡らせる手段として、注目が集まっています。

SpaceXは、10月11日に日本でStarlinkのサービス提供を開始した

Starlinkの通信が高速なのは、約550㎞と地上からの距離が近いためです。これまでのサービスは、約3万6000㎞に浮かぶ静止衛星を利用していたため、電波が弱くなっていました。

一方で、高度が低いと、そのぶん衛星1台でカバーできる範囲は狭くなってしまいます。この問題を、Starlinkは“数”で解決しました。打ち上げた数はすでに3400機超。衛星は常に移動していますが、ユーザーが通信する機種を切り替えることで、常時接続を可能にしています。

大量の低軌道衛星を使い、高速なサービスを実現している

料金も衛星通信としては非常にリーズナブルで、個人向けサービスの「レジデンシャル」は月額1万2300円。ただ、アンテナやルーター、ケーブルなどがセットになったStarlinkキットを7万3000円で購入する必要はあります。

値下がりしたスマホや通信費と比べると少々割高ではありますが、総額としては、十分個人で契約できる範囲。衛星通信が、一気に身近になったと言えるでしょう。

場所を問わずにつながるのが売りの衛星通信ですが、ネットに接続するには、バックホールとしての回線が必要になります。これは、携帯電話の基地局も同じで、最終的には光回線で各社の設備に接続しています。日本でStarlinkの地上局を担当しているのが、KDDIです。

無線は周波数が有限のため、各国ごとに規制当局との調整が必要になりますが、総務省との調整に協力をしたのも同社です。早くからSpaceX社にアプローチしていた強みを生かし、KDDIは年内には法人サービスの提供を開始します。

総務省との技術検討にも、KDDIが協力

KDDIは、現状、2つの方法でサービスを提供する計画を立てています。1つは21年に発表していた、携帯電話の基地局のバックホールとしてStarlinkを活用するというもの。小型の基地局にStarlinkを取り付け、その一帯をエリア化するのが目的です。

Starlinkでダイレクトに通信するのではなく、基地局を介することで、スマホが直接つながるようになるのがメリット。携帯電話のネットワークを介するため、音声通話まで利用可能。これまで圏外だった場所を補完することができます。

活用形態は主に3つだが、スマホとの直接通信は実現できるかどうかが不透明だ

もう1つが、Starlinkを直接提供する方法です。こちらは、一般ユーザー向けと仕組み自体は変わりません。ただし、アンテナは法人用のもの。電波を受信しやすかったり、耐久性に優れていたりといったメリットがあります。

また、現在、個人向けサービスのレジデンシャルは、東日本だけでしかサービスが提供されていません。これに対し、KDDIの法人向けサービスは、開始当初から日本全国でサービスを提供する予定だといいます。さらに、混雑時にも通信しやすいよう、帯域が優先されます。

法人向けサービスとして、より高性能なアンテナを提供する。右が法人向け

KDDIは、既存事業として閉域網やクラウドサービス、セキュリティサービスなどを提供しています。設置導入支援や構内LANなどと組み合わせて提供できるのが、大手通信キャリアとしての強みと言えるでしょう。

法人や地方自治体が、災害などの緊急時に利用するバックアップ回線としての導入や、固定回線の設置が難しかった山小屋、船上などでの利用が想定されているといいます。設置が簡単でコストも安価なだけに、これまでの衛星通信と比べ事業規模は拡大しそうです。

既存の法人事業とシナジー効果を発揮できるのが、KDDIにとってのメリットだ

実際、KDDIの執行役員 経営戦略本部長兼事業創造本部長の松田浩路氏は、「登山小屋の組合の方とは話をしているが、リーズナブルなご提案をしていきたい」と語っています。

この規模感の法人から導入できるのが、Starlinkの魅力。現時点で、料金は「複数のプランを準備しているところ」(松田氏)で未定ではあるものの、KDDI側も「単価は安い」と語っていただけに、広がりが期待できます。

現時点では実現していませんが、衛星とスマホが直接通信できるようになるサービスも視野に入れているようです。すでに米国では、通信キャリアのT-Mobileと提携。同社が免許を保有する周波数帯を使って、23年後半にスマホへの直接通信を提供する方針を明かしています。

一方で、現状、キャリア各社に割り当てられている周波数は、陸上で利用することが大前提。「そのまま(衛星で)使うのは、制度上の問題がある」(松田氏)といいます。これは諸外国でも同様で、米国では制度の調整を行っているところです。

仮に制度面の課題がクリアできたとしても、通信速度の問題は残ります。低軌道衛星といっても、今の基地局で置き換えると、その距離は「東京と大阪、兵庫ぐらい離れている」(松田氏)ため、現状のようなブロードバンドサービスを提供できるかどうかは未知数です。

低軌道衛星とスマホの直接通信は、楽天モバイルも提供を計画しています。同社は、米AST SpaceMobile社の衛星を活用する予定。9月には、「BlueWalker 3」という大型衛星を打ち上げ、通信試験を行っています。

楽天グループの会長兼社長、三木谷浩史氏は、同社のイベントで「通信速度はおそらく2Mbps程度だが、YouTubeを見るには十分速い」とコメント。試験前の発言のため、額面通り受け取ることはできませんが、実現すれば魅力的なサービスです。

楽天モバイルは、AST SpaceMobileの衛星を活用する予定だ

とはいえ、現実的には、まず緊急時に最低限の通信を行うためのサービスとして定着する可能性は高いでしょう。

アップルは、iPhone 14シリーズに「衛星経由の緊急SOS」機能を搭載しましたが、これも低軌道衛星を使ったサービス。衛星経由の緊急SOSは、ごくごく短いメッセージの送信に限定されており、遭難時などに利用は限定されます。

こうした使い方であれば、技術的な問題はクリア可能。まずは遭難時や災害時に通信が途絶してしまった際の最終手段として普及していく見通しが高そうです。

(文・石野純也)
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