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楽天モバイルの「0円廃止」、第2四半期決算からみる新料金プランの現在地

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楽天モバイルが発表した第2四半期(4月から6月)の決算で、契約者数が「純減」していることが明らかになりました。純減とは、新規契約者数から解約者数を差し引いた数がマイナスになっていること。

総契約者数自体が減少している状況を指します。母集団が多い大手キャリアでは純減はさほど珍しいことではありませんが、伸び盛りとも言える新規参入キャリアでは異例の事態です。

楽天モバイルの契約者数推移。第1四半期まで順調に伸びていたが、第2四半期に急減していることが分かる


その数、約23万。4月に500万契約を超えた楽天モバイルですが、全体の5%近く、総契約者数を減らしている計算になります。楽天モバイルは、新規参入前からドコモやKDDIから回線を借りるMVNOも展開していましたが、そちらと合算した契約者数も純減しています。

その原因は、7月1日に導入した新料金プランの「UN-LIMIT VII」です。

5月13日に発表したUN-LIMIT VIIが、その原因だ。写真は発表時のもの

自動移行がユーザーを動かした

UN-LIMIT VIIでは、昨年導入した「UN-LIMIT VI」で売りにしていた1GB以下、0円という料金体系を撤廃しました。段階制で、3GB、20GBを超えると料金が上がり、最後は使い放題になる点は変わっておらず、最大で3278円かかるところも同じですが、無料で回線を維持できなくなったところは、新旧料金プランの大きな差分と言えるでしょう。

他社のように、新料金プラン導入後も旧料金プランを維持できれば状況は変わっていたかもしれませんが、自動移行だったことがユーザーを動かしました。

UN-LIMIT VIIでは、1GB以下0円を廃止。全ユーザーを自動で同プランに移行させた


楽天モバイルが決算で示した資料が、それを裏づけます。

UN-LIMIT VIIは、5月13日の金曜日に発表されていますが、直後から解約者数が急増。平日になるといったんはその波が小さくなりますが、土日を迎えるたびに解約は増え、UN-LIMIT VIIが導入される1日前の6月30日には、数がピークに達します。ここまで一気に解約数が伸びる様子は、長く業界を取材してきた筆者でも見たことがなく、率直に驚きました。

発表直後から、解約者数が急増していることが分かる


とは言え、6月30日までは、UN-LIMIT VIで1GB以下0円が適用されていました。移行措置として、同プランを契約していたユーザーには、8月31日まで、1GB以下の場合、1078円がキャッシュバックされます。

“実利”を考えれば、8月31日までは0円で使い続けられるため、すぐに解約する必要はないはずです。にも関わらず、発表直後から一気に楽天モバイルを離れるユーザーが増えた背景には、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が決算会見で「ぶっちゃけ、0円で使われると困る」と発言したことに対する反発もあったように見えます。

0円廃止で強化された収益性

ただ、総契約者数が減っても、楽天モバイルには1GB以下0円をやめる必要がありました。いくら契約者が多くても、そこから収益を上げられなければビジネスとして成立しないからです。

元々楽天モバイルでは、0円のユーザーも楽天グループの展開する他のサービスを利用が増えることで帳尻が合うと考えていたようですが、出ていくコストの方が多ければ、あえて提供するメリットは薄くなります。楽天モバイル単体でも利益を上げなければならない以上、いつまでも0円で提供を続けるのは難しかったというのが本音だと思います。

実際のところ、新料金プランの発表に伴い楽天モバイルを解約したユーザーのデータ利用量は、8割が1GB以下でした。そのため、収益として失ったのは解約者のうちの2割程度ということになります。また、楽天モバイルの説明によると、1GBを超えるユーザーは増えているため、収益性は強化されていることになります。0円のユーザーはやめなければ9月以降、最低1078円を払うようになるためです。それまでに解約されても、元々支払いが0円だったので痛手はありません。

1GB超のユーザーに限れば、純増は続いているという


つまり、0円以下のユーザーは残ろうが、解約しようが、楽天モバイルの収益には特に影響がないというわけです。新料金プランの発表に伴い、メイン回線として利用するユーザーが8.3%、20GBを超えて料金が天井に張り付くユーザーが5.7%増えていることもあり、むしろ、同社にとってはメリットの方が多いことが分かります。

料金プランの改定で、メイン回線、かつ20GBを超えるヘビーユーザーが集まるようになった

エリア拡大で1200万回線達成めざす

もちろん、その背景には、楽天モバイルがUN-LIMIT VIの導入から1年で、急速にエリアを拡大してきたことも背景にあります。つながらなければ、いくらデータ容量が無制限でも意味がないからです。KDDIのローミングエリアでは、データ容量が5GBに制限されてしまうことも、ユーザーの獲得に対してはブレーキになっていました。UN-LIMIT VIIの導入は、こうした諸々の問題が解消され始めていることを受けたものと言えるでしょう。

一方で、UN-LIMIT VI導入以降、急激に伸びていた契約者数の勢いにブレーキがかかることは事実。最低でも1078円かかるとなれば、サブ回線としての魅力も薄れてしまいます。楽天モバイルは、エリアの拡大が全国で東京23区並みになれば、契約者の割合も同程度になり、1200万回線を達成できるとの見込みを示しています。

日本全国で東京都23区と同程度の割合を獲得できれば、楽天モバイルの契約者数は1200万に達するという


とは言え、都市部と地方では、キャリアに対して重視するポイントも異なります。一度ついた“つながりにくい”というイメージを払しょくするのも、時間がかかります。こうした事情が重なった結果、1200万回線を達成するには、それなりの時間がかかってしまうおそれもありそうです。

(文・石野純也)

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