副業や出向などで複数の企業に勤めていると、難しくなるのが打ち合わせやオンライン会議などの日程調整。
私も、複数のアカウントを所有しており、「岩澤さん、どこの日程が空いている?」と聞かれるたびに、複数のカレンダーをブラウザで開きながら、候補日をリストアップしていました。候補日をリストアップしている間や、日程調整中に予定が入ってしまい、再調整をおこなうことも珍しくありませんでした。
こうした日程調整のペインを解消すべく導入したツールが、日程調整ビジネスカレンダー「Spir(スピアー)」。今回は、1年以上Spirを使っている私の感想を交えながら、レビューしていきます。
戦略的にタイムマネジメントできる
Spirは、個人やチームで予定管理と日程調整をおこなうことができるビジネスカレンダー。多様な働き方をサポートした日程調整ができること、日程調整の候補日をカレンダー上で抽出できること、あらゆるビジネスシーンに対応した日程調整ができることなどが特徴として挙げられます。
個人プランは無料で、組織で利用する有料のチームプランも用意されています。
それでは詳しく見ていきましょう。
複数組織のカレンダーを統合管理
まず、SpirとGoogleカレンダーやOutlook予定表を連携すると、Spir上にカレンダーが表示されます。実際に仕事で使っているカレンダーはお見せすることができないため、下図では、「サンプル」と、「仕事(サンプル)」というカレンダーを表示しています。
仕事(サンプル)」というカレンダーに対して、Spir上で予定を作成した例がこちらです。
ここまでは普段使っているOutlook予定表や、Googleカレンダーと変わりはありません。
Spirの真価は、自分のカレンダーだけではなく、副業先やプライベートのカレンダーも統合管理できるところにあります。この機能により、複数のカレンダーを同時に見ながら、予定を調整できます。
私の場合は、個人事業主(兼プライベート)のカレンダーと、2つの副業先のカレンダーを連携しています。
これまでは、個人事業主やプライベートの予定が入った際、副業先のカレンダーに手動で予定を入れる必要がありましたが、Spirを使えば予定を別のカレンダーに移さずに、Spir上で一括管理できます。
繰り返し使える日程調整URLを発行
Spirでは、予定管理に加えて、統合したカレンダーの情報を利用して、打ち合わせやオンライン会議などの日程を調整することも可能。複数のカレンダーを見比べながら候補日を選ぶ手間を軽減できるのはもちろん、ダブルブッキングも防ぐことができます。とくに、私が便利だと感じているのが、Spirの「空き時間URL」機能です。時間帯や曜日などを指定して、繰り返し使える日程調整URLを発行できます。
各カレンダーの空き日程の抽出は、Spirが自動的におこないます。空き日程が埋まったり、予定がキャンセルされたりしたときには、リアルタイムに候補日が更新される仕組みです。
予定を入れられる曜日や時間が固定されている場合、一度空き時間URLを発行しておけばそのリンクを使いまわすことができ、相手ごとにURLを発行しなおす必要はありません。
たとえば、「毎週月〜水、1時間」の空き時間URLを発行したとします。
それを、AさんBさんCさんとそれぞれ異なる取引先に同じURLを送ります。
Aさんとの日程を確定した時点で、BさんCさんの日程調整ページからAさんが選択した候補日が消えます。
以降も、「毎週月〜水、1時間」という条件で、ほかの人と日程調整したいときには、同じURLを何度でも繰り返し使うことができます。
「空き時間URL」は、複数のカレンダーから空き時間を抽出してくれるだけではありません。「日本の祝日を除外する」、「任意の日程を除外する」、「前後の時間を〇〇分空ける」といった、かゆいところに手が届く機能も搭載しています。
とくに、「前後の時間を〇〇分空ける」機能は、オンライン会議が増え、「打ち合わせが終わったら、すぐに次の打ち合わせ……」といった余白のない状況が生まれやすいリモートワーク環境下でのタイムマネジメントに役立ちます。
予定調整後に自動でURLを共有
もちろん、日程調整をして終わりではありません。Spirは、Google Meet、Microsoft Teams(以下、Teams)、Zoomと連携することが可能です。日程を確定すると、主催者がGoogleアカウントの場合はGoolge Meet、Microsoftアカウントの場合はTeamsのURLが、自動的に発行されます。
また、あらかじめZoomと連携しておくことで、アカウントに紐づくオンライン会議ツールかZoomかを選ぶこともできます。
共有する予定の閲覧範囲を選択できる
ここまで、個人プランのカレンダーの画面を見てきましたが、ここからは法人やチームで利用できる「チームプラン」について紹介します。チームプランでは、統合したカレンダーを組織内に共有し、そのカレンダーを利用して日程調整をおこなうことができます。ここで言う組織とは、Spirで管理するひとつのチームの単位のこと。基本的には、1つの会社で1つのチームになります。
冒頭にも記載したように、私は複数のアカウントを所有しています。
たとえば、副業先①でチームプランを利用した場合、副業先①の人には、Spir上で連携したカレンダーごとに設定した権限で予定が表示されます。
そのため、Spir上で日程調整をすればダブルブッキングも起きませんし、私の他の予定も加味した候補日を挙げることが可能です。
共有方法は、「予定の詳細までを表示」「予定の時間枠のみ、詳細は非表示」「共有しない」の3つの中からカレンダーごとに選択します。
共有方法を選択できるのが、チームプランの便利なところです。
チームメンバーは、「詳細まで共有」されている予定のみ、予定の件名や詳細まで見ることができます。一方、「時間枠のみ共有」されている場合は、予定があることだけわかるようになっていて、件名も表示されません。
たとえば、「時間枠のみ共有」すると、相手には時間枠以外の詳細は表示されません(「メンバー」欄は、表示しているアカウント名です)。
このように、チームプランでは、共有方法を設定したうえで複数のカレンダーを一括で共有できるため、各メンバーの副業やプライベートの予定を加味しながら日程調整をすることができます。
プライベートも含めたすべてのカレンダーを共有できるため、セキュリティ面を心配する人もいるかもしれませんが、Spirはその点も安心できます。
Spirではユーザー認証をGoogleが提供している高いセキュリティ基準を満たしているサービスを使っています。第三者にアカウント情報を取得されることはありません。 また、連携したGoogleカレンダーやOutlookのカレンダー情報(タイトル、日時、参加者、場所、メモなど)もSpirのDBには保存しておらず、Spirで作成した日程調整に関するカレンダー情報のみ保存しています。
Spir公式HPより
確定型や投票型の日程調整機能も
Spirでは、その他の日程調整方法として「候補を提案(確定型の調整)」と、「候補を提案(投票型の調整)」の2つの機能があります。これらは、1回きりの日程調整で利用でき、調整が完了するとURLが無効になります。「候補を提案(確定型の調整)」は、複数の日程を抽出し、その中から都合のつく日時を選択してもらう、ベーシックな日程調整方法。
候補日の自動抽出では、予定を考慮するカレンダーや曜日、日時などの条件を選択できます。
日程調整のURLを受け取った人は、日時を選択します。
受け取り手もSpirを利用している場合は、自身の予定と見比べながら日程調整することが可能です。
「候補を提案(投票型の調整)」は、複数の日程から参加可能な日程を投票する機能。複数人で日程調整をするときに便利です。
主催者が複数の日程を選択し、URLを発行するまでは、これまでと同じ流れです。URLを受け取った人は、候補日の一覧から参加可能な日程を選択していきます。
Spirのアカウントがある場合は、自身のスケジュールと照らし合わせながら投票します。
このとき、すでに投票している他の人の参加状況も見ることが可能です。
主催者は、各候補日の出席予定者の一覧を確認し、予定を確定します。
確定すると、参加者に確定通知が送られます。
投票型は、複数人での日程調整の際に便利ですが、日程が確定するまでの間、投票中の日程が仮予定としてカレンダー上でブロックされる仕様になっています。
主催者だけでなく、Spirユーザーの投票者も同様にブロックされるため、一時的にカレンダーが見づらくなる点は、事前に共通認識を持っておく必要がありそうです。
1分でわかる「Spir」まとめ
Spirは、「複数組織のカレンダーをまとめて予定を管理すること」、「利用シーンに応じてさまざまな日程調整方法を選択すること」ができるビジネスカレンダーです。副業やリモートワークという多様な働き方に対応した予定管理、そして「候補を提案(確定型の調整)」、「候補を提案(投票型の調整)」、「空き時間URL」の3つの日程調整方法により、さまざまなビジネスシーンに対応した日程調整が可能です。
情報を一元管理するツールとして気になるセキュリティ面ですが、Spirのデータベース上には保存されず、Spirで作成した「日程調整に関するカレンダー情報」のみが保存される仕組みです。また、国際規格である情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証も取得しています。
料金プランは無料の個人プランと、有料のチームプランの2つ。
副業や出向、フリーランスなど複数社で働いている人や、メールでの日程調整が面倒だと感じている人は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか?
(文・岩澤樹)
認定NPO法人で情シス・経理の経験を経て、現在はフリーで活動中。クラウドサービスの活用を前提とした業務フローの整備や、ツール導入をおこなっています。情シスとしては、Salesforce、LINE WORKSをはじめとした全社横断のツールの導入運用管理を、経理としてはfreee会計の導入などをおこなってきました。
どのSaaSを選べばいいかわからない……。あのSaaSが気になっているけれど、検証する時間がない……。そんな方の一助になるように、私が感じた魅力をわかりやすく届けます。