株式会社岩谷技研は、“気球による有人成層圏フライト”の実現を目指し、高高度ガス気球と旅行用気密キャビンを開発・製造しています。
そして6月9日(木)、気密キャビンにハムスターを乗せた打ち上げ検証を実施。ハムスターは、成層圏まで飛んで、無事生還しました。
成層圏でも地上とほぼ同じ環境、ハムスターは安眠
岩谷技研の気密キャビンは、地上と同じ気圧・気温などを維持する設計。今回は、ハムスターがキャビンに乗り、沖縄県宮古島市池間漁港から成層圏へ向けて飛び立ちました。午前8時16分に打ち上げが始まり、平均上昇速度6.3m/秒で上昇。約1時間後に最高到達高度23kmの成層圏に達したあと宮古沖の海上に着水し、回収班によって無事回収されました。
計測データにより、キャビン内環境は実験過程を通じて酸素濃度23~25%・温度24~29度・内圧970~1030hPaに維持されていたことを確認。地上とほぼ同じ環境で成層圏に達したハムスターは、お腹を見せて寝ていたそうです……(夜行性のため)。
熱帯魚に続き、ハムスターが成層圏へ
同社は、高高度ガス気球・気密キャビン・各種機器のすべてを札幌市内にある本社およびR&Dセンター、江別市にある自社気球製造工場で開発・製造しています。2018年には、熱帯魚(ベタ)を最高高度28kmまで打ち上げて無事帰還させました。今回の検証では、気密キャビンによって熱帯魚よりヒトに近いハムスターが成層圏で快適に過ごしたという成果を得たと言えるでしょう。
有人フライトなども実施
とは言え、目標はヒトの成層圏到達。そのために、有人でのフライト試験なども実施しています。今年2月、福島県相馬市にある実験場で、同社初の低高度飛翔試験を実施。テストパイロットを乗せ有人状態で最大高度30mでの長時間係留に成功しました。
また5月には、商業宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」にて自社製LoRa無線基板の高高度放球試験を実施。それまでの最高高度記録を更新する高度33.1kmから安定した信号受信に成功しました。
現在2週間に1度以上のペースでさまざまな実証実験を重ねており、今夏の終わりには中高度飛翔試験(高度2000~4000m)を予定。そして今年度内に高高度有人飛翔試験(高度15~25km)を実施できるよう、検証を進めるとのことです。
きっかけは、風船につけたカメラでの宇宙撮影
この取り組みの始まりは、風船につけたカメラで宇宙を撮影する「ふうせん宇宙撮影」でした。代表の岩谷圭介氏がひとりではじめた「ふうせん宇宙撮影」は注目を集め、2016年に事業化。2年後には、「自分たちは行けないのだろうか」という思いから、ベタでの検証を実施しました。ベタの帰還後、気球なら宇宙旅行の課題である安全性と経済性を克服できると確信し、ヒトを宇宙へ運ぶためのキャビン開発に注力。「気球用のキャビン」として特許を取得しています。
“気球による有人成層圏フライト”の実現へ向け、着実に前進している同社。この先、6人乗り・77m級気球の打ち上げなどを経て、旅客型気球運航開始を目指すようです。
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株式会社岩谷技研
(文・Higuchi)