実際の診療に近い体験をバーチャル空間で
今回、開発されたバーチャル空間は、腹部視診・聴診・打診、心電図測定、血液ガス検査、下腿浮腫の検査、血圧測定など、医療現場で必要な代表的な手技を、実際の医療現場における実習のように学習できるというもの。動画やテキストのように見て学習するコンテンツではなく、バーチャル空間上の患者に対して、バーチャル空間上にある医療器具を使って診療するという、実践的なコンテンツです。
手を認識して学習を進めるため、参加者はコントローラーを使用することなく、実際の診療に近い体験を得られます。
また、患者のズボンを下げる動作や聴診器から聴こえる音など、実際の診療を忠実に再現しているほか、内臓や血管の可視化など、バーチャルならではの補助機能を搭載しています。
さらに、バーチャル空間内にガイドを表示することにより、参加者が指導者の付き添いなしで繰り返し自習できるという、現実の実習にはないメリットがあるようです。
実践に基づく学習が必要な医療現場
高度な技術や知識が要求される医療の現場では、実践に基づく学習が必要不可欠といいます。しかし、世界的な感染症の流行で、外出や実習が制限されたため、新たな学習手法の開発が望まれているとのこと。
実践に近い学習機会を用意するための手段として、イマクリエイトと新潟大学は、メタバースをはじめ、現在急速に発達しつつあるバーチャルテクノロジーを活用し、医療現場で必要な手技を学習できるバーチャル空間を開発しました。
今後は、コンピュータ画像(CG)によるVRだけでなく、実画像を交えたVRの併用を検討しているようです。
薬学生向けバーチャルトレーニングを開発
イマクリエイトは今回のバーチャル空間以外にも、さまざまなバーチャル技術の研究・開発をおこなっています。2022年5月には、薬学生が自分の声を使って患者とのコミュニケーションを学ぶことができる、バーチャルトレーニングを神戸学院大学と共同で開発したことを発表。
薬局を想定したこのバーチャルトレーニングでは、症状のヒアリングや服用中の薬、生活習慣など、患者が来局してから薬を受け取るまでの一連のコミュニケーションを、実際に患者と会話するかのように学ぶことができます。
同月25日(水)には、高度生殖医療で用いられる卵子や胚を凍結保存する細胞凍結法の一種である「クライオテック法」を繰り返し実践できる、胚培養士向けのバーチャル空間を株式会社リプロライフとともに開発したことを報告。
ピペットによる液体の吸いこみや吸いだし、顕微鏡をのぞきながらの卵子の吸引や放出など、現実のクライオテック法において必要な、非常に細かい動作をバーチャル上で練習できるようです。
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新潟大学医学部医学科
(文・Haruka Isobe)