なお、同発表は、2021年9月に両社が共同で応募し採択された「内閣府令和3年度 課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト(以下、実証プロジェクト)」の成果報告にあたります。
衛星画像を活用したコーヒー栽培
気候変動による栽培環境の変化や新型コロナウイルス感染症の影響により、コーヒー栽培において、遠隔地から農園の情報を把握することができる「衛星リモートセンシング技術」の活用ニーズが高まっているといいます。加えて、シェードツリー(強い日差しに弱いコーヒーを守るために栽培する、日陰を作る木)の存在により、コーヒー栽培は生物多様性保全やCO2の吸収など、気候変動緩和への貢献が期待できるものの、その効果は客観的に評価されていないとのこと。
こうした状況のなか、UCC上島珈琲と国際航業は、気候変動リスクの管理と持続可能な調達の実現を目指して、実証プロジェクトに参加しました。
遠隔から生産状況のモニタリングが可能に
今回の実証プログラムは、衛星リモートセンシング技術による画像解析を活用し、コーヒーの生産量・質をモニタリングする指標・病虫害の検出技術の開発といった「コーヒー生育診断指標の開発」、周辺森林とシェードツリーの類似性評価・シェードツリーによるCO2吸収量評価といった「気候変動緩和指標の開発」をおこなうというもの。UCC上島珈琲と国際航業は、今回のプログラムの実証項目すべてにおいて期待する成果を上げることができ、コーヒー栽培における衛星リモートセンシング技術の有効性が明らかになったことを発表しました。
とくに大きな成果として、コーヒーの活性度を示す指標(収量・品質・病気など)の特定に成功したことが挙げられるといいます。また、農園周辺の植生とコーヒーとでは光の反射特性に違いがあることが明確になったとのこと。
衛星画像をもとに作成した植物の活性度を示すヒートマップでは、赤が濃いほど活性度が高く、赤→黄→緑→青→紫の順に活性度が低くなっています。両社は、衛星画像から生産性の低いエリアを特定し、営農計画に反映させることで、効率的な農業をおこなうことが可能になるとしています。
実証で開発した指標の精度向上を目指して
今後、UCC上島珈琲と国際航業は、現地政府や大規模生産者に対して、今回の実証プロジェクトの成果を用いたコンサルティングを提供するビジネスの早期実現に向けて、実証で開発した指標の精度向上を図る取り組みを共同でおこないます。両社は「次世代型のコーヒー栽培を通じて、森林・生物多様性の保全、気候変動への対応、農家の栽培支援を推進します」と語り、これからも持続可能なコーヒー産業の発展への貢献、そして持続可能な社会の実現に向けて取り組む方針です。
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「内閣府令和3年度 課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」成果報告書(概要)
(文・Haruka Isobe)