AIが書いた脚本の映画化は、海外で3つほど例があるものの、日本国内では初の試みとなるようです。
人間が理解できるストーリーをAIが生成
『少年、なにかが発芽する』は、「トマト嫌いの少年が、母親から無理やりトマトを食べさせられたことをきっかけに、背中からなにかが発芽してしまう」という奇妙な出来事を描いたもの。この脚本を制作したのは、人間ではなくストーリー生成AI「フルコト」。多数の候補文の中から適切な文を選択して、脚本を生成します。
「フルコト」のベースになっているのは、株式会社Alesが開発したP-S-L技術です。
(P)プロットライングラフ、(S)感情分析(Sentiment Analysis)、(L)ログラインの3つの要素を複合的に評価、判断することで、人間が理解できるストーリーを起・承・転・結に即して作成します。
これまでは、与える教師文の規模に限界があり、生成される候補文の表現の幅が限定されていましたが、候補文の生成手法として、ディープ・ラーニングの一つであるLSTMを採用。
大規模な教師文を与えることが可能になり、候補文の表現の幅が広がるとともに、変化に富んだ脚本を生成できるようになりました。
AIがストーリーを語り始めることを夢見て
「フルコト」を開発した株式会社Alesは、自然言語処理分野を主軸としたAI開発企業。はこだて未来大学副理事の松原仁氏を中心に2018年6月に設立されました。Alesは「AIと創造性」という分野に注目し、AIが“物語/ストーリー”を語り始めることを夢見て開発構想を思い描きました。そのエッセンスを詰め込んだストーリー作成AIが「フルコト」だといいます。
『少年、なにかが発芽する』の映画祭での上映決定をうけて、松原氏は「この喜びを動機付けとしてさらなる改良を進め、AIが人間を支援することによって脚本の世界が、ひいては映画の世界が広がることを期待したいと思います」と語っています。
SSFF&ASIAはアジア最大級の国際短編映画祭
『少年、なにかが発芽する』は、SSFF & ASIA 2022にて、世界に配信されます。SSFF & ASIAは、1999年の誕生以来、毎年6月に東京・原宿表参道エリアを中心に開催されている映画祭。
今年は「Meta Cinema~超える・見つける・始まる」」をテーマに、バーチャル映画館の体験や、人間の脳波を利用し作品分析するニューロサイエンスがこれからの映像表現にどう活用できるのかを探るトークイベントなど、新時代の映画祭をめざす取り組みがおこなわれるようです。
映画祭の開催期間は、6月7日(火)〜20日(月)。よみうりランドなど東京の複数会場で開催予定です。会場に足を運べない人は、6月30日(木)まで、オンラインでも視聴可能です。
『少年、なにかが発芽する』は、6月11日(土)、表参道ヒルズのスペースオーで13時30分より上映予定。詳細はこちらからどうぞ。
PR TIMES
株式会社Ales
SSFF & ASIA 2022 公式サイト
(文・takuma hanawa)