AIを搭載した医療機器が、新医療機器として厚生労働大臣に承認されるのは、日本初とのことです。
AIがインフルエンザの診断をサポート
アイリスが展開する「nodoca」は、咽頭(いんとう:一般的に「のど」と言われる部分)の画像と診療情報をもとにAI解析する機器。第一弾の対応疾患はインフルエンザで、同感染症の特徴的な所見を検出し、診断に用いることができます。nodocaは、のべ100医療機関・1万人以上の患者の協力によって収集した、50万枚以上の咽頭画像をもとにしたAIアルゴリズムを搭載。
加えて、アイリスが独自に設計・開発した咽頭画像を撮影するためのカメラを採用し、既存の内視鏡を用いることなく口腔内・咽頭を鮮明に撮影できるといいます。
画像から感染症を見極める診断技術
インフルエンザに感染した場合、インフルエンザ濾胞(ろほう)と呼ばれる腫れ物が咽頭にできるといいます。しかし、インフルエンザに限らず、風邪にかかった状態や、健康な状態であっても、喉の奥には似たような膨らみがあるとのこと。表面の色調や艶やかさ、大きさや盛り上がり方など、さまざまな特徴の組み合わせから、インフルエンザ濾胞を見極めることは、長年の経験を積んだ医師でないと難しいようです。
そこでアイリスは、熟練医の判断技術をAIの力で再現することを目指し、nodocaを開発しました。
患者の負担、医療者の飛沫感染リスクを軽減するために
既存のインフルエンザ検査法は、発症早期では診断精度が十分に発揮されていない、という課題のほか、さまざまな懸念があるようです。検査時に綿棒を鼻腔内に挿入する行為は、患者の痛みを伴うと同時に、検査時の医療者に対する飛沫感染リスクがあるといいます。
これらの課題を解決すべく、アイリスは2017年11月の創業時から研究・開発に取り組んできました。2018年度・2019年度には、自社開発の咽頭カメラを用いて、臨床研究法における特定臨床研究として大規模な前向き研究(疾病の要因と発症の関連を調べるために一定期間、観察を続ける研究手法)を実施。
2020年には開発したインフルエンザ判定AIプログラムをもって治験(国の承認を得るための成績を取集する臨床試験)を実施し、機器の有効性・安全性などの検証をおこないました。
対象疾患の拡大を目指して
アイリスは独自の画像解析技術をもとに、新たな感染症を含む他疾患を検出するAI医療機器の開発を進めています。現在は、新型コロナウイルス感染症をはじめとする複数の疾患について、大学病院を含む医療機関と共同研究を進めており、複数の競争的研究資金の採択を得ているとのこと。
アイリスは「今後、論文化・学会発表に注力することで医学界へ研究成果を還元するとともに、製品化を通して医療現場に貢献して参ります」と語っています。
PR TIMES(1)(2)
アイリス株式会社
(文・Haruka Isobe)