胸腔ドレナージの際、体内状況を正確に把握できない?
医療現場では、体内に貯まった血液・膿・気体などをチューブを挿入して体外に排出する“ドレナージ”という処置が一般的に行われています。代表的なのは、腹水に対する腹腔ドレナージや気胸に対する胸腔ドレナージ。大学医学部附属順天堂医院では年間約1300件の胸腔ドレナージが実施されているようです。
腹腔ドレナージなどの場合、通常は超音波装置を使って体内の臓器を確認し、臓器に触れないようにチューブを挿入します。安全性が高いこの方法、実は胸部(胸腔)には使うことができません。胸腔は身体のなかで唯一空気を含む場所で、その空気が超音波をはね返してしまうからだといいます。
そのため現在は、胸部CT画像をもとに術者が経験によって患者の胸腔内を分析・把握して実施している状況。心臓や肺などの臓器が集まる胸腔で、不適切な場所に挿入してしまう危険性もあるということです。
ARで“身体を透視”しているように
そんななか順天堂大学は、ARを活用して胸腔内を可視化するシステムの構築へ向けたクラウドファンディングを開始。胸腔ドレナージの安全性を向上を目指します。具体的には、胸部CT画像を3D画像データとして処理し、術者のARグラス上へリアルタイムに反映することで、まるで“身体を透視”しているような状況を作り出すとのこと。胸腔内の臓器の位置をARで確認できるので、不適切な場所への挿入を防げるというわけです。
胸腔ドレナージ以外への応用も
胸腔ドレナージの際、年齢や体格によって胸膜の肥厚やスペースの狭小化などが見られ、実施が極めて困難となるケースが多発しているといいます。また、チューブ挿入時にしばしば発生する胸腔臓器損傷は重大な合併症を引き起こすことからも、安全な胸腔ドレナージの手法開発は不可欠という認識が高まり、このたびのプロジェクトを実施したようです。
同システムを確立することで、胸腔以外のドレナージや穿刺(針を体内に挿入する医療行為)にも安全性をもたらせるといいます。
まずは、目標額650万円
READY FORでのプロジェクトは、第1弾として5月31日(火)まで実施予定。まずは650万円を目標額とし、CT画像の3D化とARグラスへのリアルタイム投影を実現する技術を開発します(開発期間23年1月まで)。そして第2弾として、目標額を2500万円とするプロジェクトも実施予定。体内に挿入されたチューブの先端位置をリアルタイムに表示できるシステム開発へ移るとのことです。
同プロジェクトは、3000円~支援が可能。1万円以上の支援で活動報告書を受け取ることができ、5万円以上ならオンライン講演会などに参加可能となります。
PR TIMES
READY FOR
(文・Higuchi)