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Tech ターゲットは「人口50万人以下の都市」新潟発スタートアップが語る、地方におけるドローン配送の可能性

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ターゲットは「人口50万人以下の都市」新潟発スタートアップが語る、地方におけるドローン配送の可能性

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近年、注目を集めるドローンの活用。身近なところでは、商品配送などへの利用も期待されています。

とはいえ、実際に日常で使われる状況をイメージできない、「本当に実現するの?」と懐疑的に見ている方もいるかもしれません。

「ドローン配送は、地方都市こそ効果が期待できる」と話すのは、新潟市に拠点を置き、ドローン配送の航路設定や運行事業を手がけるTOMPLA株式会社代表取締役の藤本高史氏です。

同社が実施した実証実験や、日本でのドローン配送活用の可能性についてうかがいました。

人口50万人以下の都市の配送を効率化できる

——まず、配送にドローンを活用することのメリットについて教えてください。

藤本:日本はこれから高齢化社会が進み、配送に携わる人も減っていくことが予測できます。そのような時代の配送を支える手段として、ドローンは大きな可能性を秘めていると考えています。

——最近はUber Eatsなどのデリバリーサービスも注目されていますが、これらと比べてドローン配送はどのような点が優れているのでしょう?

藤本:ドローン配送が優位性をもつのは、人口50万人以下の都市だといわれています。

50万人を超える地域の場合、住宅がある程度密集しているので人の手でも効率的に配達できるのですが、それより小規模な都市の場合、配送先から次の配送先までの距離が長くなるので効率が下がってしまうんです。そんなときに、ドローン配送であれば効率的に荷物を届けることが可能になります。

また、人口が50万人に満たない地域でも、病院や大学、工場など、配送サービスの利用者が年間500人以上集まるピンポイントの場所があれば、そこに配達を行うことで効率的に必要な人に荷物を届けることができます。

——海外ではすでにドローン配送のサービスが提供されているケースもあると聞きますが、どのような状況なのでしょうか?

藤本:Google傘下のWingという企業がオーストラリアやアイスランドでサービスを展開しており、サービス開始からの2年間で10万回の配送を達成したことを発表しています。さらに、昨年秋からはアメリカにも進出し一部の地域でサービスの提供を開始しました。

また、イスラエルのFLYTREXという企業もアメリカの一部でサービスを展開するなど、欧米ではすでに商用サービスが始まっています。

目視外飛行でコーヒーを配送する実証実験を実施

——これまでにも何回か実証実験を行ってきたとのことですが、その内容についてお聞かせください。

藤本:昨年6月に最初の実証実験を行い、新潟駅前の大通りを渡るビルとビルをつなぐ短距離で書籍とパスタを配送しました。

その後、10月には市内を流れる信濃川を横断する形で、実際にユーザーに商品を購入いただいての実証実験も実施しています。

——今回実施されたコーヒー配送の実証実験は、これまでの実証実験とは何が違うのでしょうか?

藤本:今回はコーヒーチェーン店との協業で、市内の店舗から会場である公園まで配送を行いました。実用化を見越し、実際の店舗のオペレーションに組み込む形で提供している点が特徴です。

これまでの実証実験はオペレーターがドローンの機体を目視できる距離での飛行でしたが、今回は初めて目視できない距離へ配送している点も新たなチャレンジとなります。さらに、運ぶ商品も液体のコーヒーということで、こぼさずに届けるための難易度も上がっています。

具体的な検証内容としては、液体をこぼさずに運ぶための自動飛行を行うための自動飛行オペレーションや、1日に何往復することができるか、実際に導入した場合に店舗側にどの程度の負荷がかかるのかといった部分を確認しました。

配送スピードの効率化に加え、CO2削減にも寄与

——実証実験前に課題として懸念されていた事項はありますか?

藤本:単純に、「コーヒーがすごくこぼれるのではないか?」という点が心配でした。でも、今回協業させていただいたコーヒーチェーンでは、普段からUber Eatsなどのデリバリーに対応しているので、こぼさずに配送するためのノウハウが確立されていたんですね。

人間が自転車で運ぶよりドローンのほうが揺れは少ないですし、フタの内側にラップをかけるなどの対応で、まったく問題もなく運ぶことができました。

——たしかにフードデリバリーのノウハウはドローン配送にも生かせそうですね。実証実験で新たに見えてきたことはありますか?

藤本:まず、メリットとして自転車を使った場合に比べてかなり早く配送できることがわかりました。速度も時速50〜60kmと自転車に比べて速いですし、信号などの配送に影響するものが少ないことも強みとなります。

さらに、CO2排出量の計測も行ったのですが、こちらも想定していた以上の成果が表れました。今回は往復8Kmの距離を往復5回飛行したのですが、同じ距離を車で運んだ場合と比較すると、CO2排出量を43分の1に抑えることができました。これはエアコンなら51時間分に相当します。

今後、より広範囲・高頻度でドローン配送を提供できるようになれば、さらに多くのCO2排出量削減に貢献できると考えています。

——実際に商品を購入された方の反応はいかがでしたか?

藤本:お客さまからは、「楽しかった」という声がとても多く挙がっていましたね。

やはり、日本ではドローン配送はまだ珍しいので、未来の配送の姿を見ることができた、普段とは違った体験ができたという点に新鮮さを感じていただけたのだと思います。

オペレーション均一化や地域への周知が今後の課題

——今後に向けての課題となるのはどのような部分でしょうか?

藤本:オペレーションをどのように均一化させていくかは今後のテーマだと感じています。

今回は内部でオペレーションを実施したのですが、より広く展開していくためにはオペレーションを均一化するためのしくみ作りやオペレーターの育成が不可欠になります。

また、今回は1日限定での実施でしたが、次のステップは1か月、3か月といった一定期間、サービスを定期提供する体制を整えることだと思っています。

さらに、地域の方に知っていただくための働きかけも重要です。すでにフードデリバリーサービスを使ったことのある方ならドローン配送もある程度イメージできるかもしれませんが、地方都市は車文化が強く根付いているので、フードデリバリーサービス自体を使ったことがない方もまだ多いのが実情です。

そのため、地域の方とコミュニケーションをとりながら、自宅にいながら商品を届けてもらえる体験の魅力や、具体的な注文の方法などを伝え、認知を広げていくことが重要かなと思っています。

チェーン協業と地域課題の解決の2つの軸で展開していきたい

——日本のドローン配送は、今後どのように広がって行くのでしょうか?見解をお聞かせください。

藤本:これまで、ドローンを使った実証実験がニュースなどで話題になっても「実用化はまだ先」といわれ続けていたと思います。この背景には法律の壁があったのですが、今年以降、航空法の改正によってドローンの「第三者上空飛行」が解禁されます。

これによってサービスを提供しやすい環境となります。なので今後は、日本でもドローンを使った実用サービスが提供されるようになっていくのではないでしょうか。

——御社は、今後どのような展開を想定されていますか?

藤本:方向性としては、大きく2つを考えています。

まずは今回の実証実験のような全国チェーンの店舗と連携しながら、そのチェーンのオペレーションに組み込んでもらう形で提供する方式です。こちらは中小規模の地方都市などを想定したものですね。

そしてもうひとつが、地域課題の解決として、山間部や離島などの過疎地に住む人に、
生活に必要な商品をまとめて配送するような地域軸としての活用です。公民館などの近隣の人が集まりやすい場所をドローンポートとして使えば、そこでコミュニケーションが生まれる効果も期待できますし、過疎地を救う担い手として使っていただけるのではと考えています。

もちろん、安全が最優先なので、その部分はしっかり石橋を叩きながら進めていますが、そのうえで広く使っていただけるシステムを作り、暮らしを変えるためのサービスを提供していきたいと思っています。

(文・酒井麻里子)

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