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Tech マルシェを運ぶ、地域が元気になる。「モビマル」が提案する固定店舗を持たないという選択肢

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マルシェを運ぶ、地域が元気になる。「モビマル」が提案する固定店舗を持たないという選択肢

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近頃よく目にするキッチンカー。

じつは、その裏側にはマッチングサービスがあります。出店場所と移動店舗をつなげる「モビマル」は、2019年の立ち上げ以来、移動販売の可能性を広げる取り組みを続けています。

「店に行く」から「店が来る」に変わると、私たちの暮らしはどう変わるのでしょうか?一般社団法人日本移動販売協会(以下、日本移動販売協会)の代表理事と株式会社シンクロ・フード(以下、シンクロ・フード)の地域創生アドバイザーを務める、「モビマル」の生みの親・太田明男氏に話を伺いました。

大阪狭山市で開催した「夕暮れマルシェ」

新規の飲食店は、半分が2年以内に廃業する?

――「モビマル」のサービスを始めた経緯を教えてください。

太田:2019年8月に日本移動販売協会を立ち上げ、「モビマル」のサービスを開始しました。その後、2020年9月に現在の運営元であるシンクロ・フードへとジョインし、現在に至ります。

――飲食業の支援サービスを選んだのは、どんな理由があるのでしょうか?

太田:じつは私は「モビマル」の立ち上げ前に飲食店を経営していたんです。5年前にもともと勤めていた会社から独立して、地元である大阪の味を全国に広めようとイカ焼きの専門店をオープンしました。

――それは思い切った転身ですね。飲食店の経営は順調だったんですか?

太田:大手ショッピングモールに出店するなど、始めのころは順調でした。しかし、慢性的な不漁でイカの原材料価格が高騰して、店舗運営が難しくなってしまいました。

――原材料価格の高騰は、今も多くの飲食店を悩ませている要因ですよね。

太田:弊社が過去におこなった調査では、オープンから2年以内に60%以上の飲食店が廃業するという結果でした。廃業する理由は原材料価格の高騰以外にもさまざまですが、それほどハイリスクなのが飲食業界の現実なんです。

「モビマル」による柔軟なビジネスモデル

――そのときの経験が、後の事業に生かされているんですね。

太田:飲食店の経営において、固定店舗を持つことは大きなリスクになると考えています。一度店舗を構えると場所を簡単に移動できませんし、業態を変えるのも容易ではありません。さらに、出店や運営にあたっていろいろなコストが発生します。

これらの課題を解決できないか考えてたどり着いたのが移動店舗という形態で、「モビマル」のサービスが生まれました。

――「モビマル」とはどんなサービスなのでしょうか?

太田:「モビマル」は、移動販売をおこなう事業者に、出店場所を提供したり、運営を支援したりするサービスです。移動販売車の購入・レンタルのサポートもしています。

移動販売車と出店場所、そしてエンドユーザーの3者をつなぐプラットフォームという位置づけです。

モビマルのビジネスモデル

――「モビマル」の仕組みを教えてください。

太田:まず飲食事業者が持っている移動販売車を「モビマル」に登録してもらいます。これから移動販売を始める事業者は、「モビマル」で移動販売車を購入・レンタルすることができます。

次に「モビマル」が出店場所やイベントを紹介して出店希望者を募り、出店日時のシフトを組むという流れです。出店場所は、遊休地やビルの空きスペースです。自治体や鉄道会社、不動産デベロッパーなど、さまざまな業態から提供してもらっています。

エンドユーザーは「モビマル」のWebサイトやアプリを通じて、出店場所や日時を確認することができます。

――店舗が移動できるメリットとはなんでしょうか?

太田:やはりトライアル運用ができることです。移動販売車を借りる費用などはもちろん発生しますが、固定店舗を構えるよりも安価で事業を始められます。

トライアルが上手くいけば固定店舗の出店にもつながりますし、もし上手くいかなくても業態や営業場所などを柔軟に変えられます。

――移動販売車を使ってテストマーケティングをするということですね。

太田:そうすれば失敗したときのリスクを減らせます。すでに固定店舗を持っている場合でも、新業態にチャレンジするときや、店舗とは別の場所でプロモーションをするときにも活用できますから、幅広いビジネスモデルだと思っています。

現在はキッチンカーで料理を提供する業態が9割を占めていますが、今後は新しい業態もどんどん増やしていく考えです。

神戸市で出店したキッチンカー

移動販売で自粛生活を支援

――最近は住宅地や公園などでキッチンカーの出店が増えたように思います。市場が広まったきっかけはあるのでしょうか?

太田:移動販売車をさまざまな場所で展開する提案は当初からおこなっていましたが、注目されるようになったのは、コロナ禍に実施した神戸市との取り組みがきっかけです。

2020年の春に初めて緊急事態宣言が出されたとき、みなさん一斉に外出を自粛しましたよね。そのとき東京都や神戸市などさまざまな自治体が、Uber Eatsや出前館などの宅配サービスの利用補助といった支援策を打ち出しました。

――記憶に新しい出来事ですね。

太田:ただ、配達エリアの圏外に住んでいる人たちも大勢いて、神戸市からそうしたエリアにキッチンカーを派遣できないかと打診があったんです。そこで、神戸市内の山手にあるニュータウンなどを中心に、キッチンカーを出店する社会実験をおこないました。

――利用者の反響はいかがでしたか?

太田:とても好評で、それが私たちにとって転機となりました。また、休業要請が出て苦しんでいる飲食店の助けになる効果もあり、大きな意義のある取り組みでした。

「MOBIX」で移動販売の可能性を拡張

――キッチンカーの出店はランチやイベントが主ですか?

太田:現状の代表的なモデルはランチタイムやイベントへの出店です。しかし、ランチ市場は単価が低く、イベントに頼るのは不安定という問題があります。

そこで注力しているのが、同じ場所で時間や曜日によって店舗を変える取り組みです。たとえば、朝はカフェ、昼はランチ、夕方は立ち飲みが来るイメージですね。出店する側もニーズが高い日時や場所を選べますからメリットがあります。

――時間帯によって出ているお店が変わると、見ている人も楽しいですね。

太田:飲食に限らず、産地直送の野菜を販売する八百屋や、ほかにも靴磨きやマッサージなど、さまざまな業態が参加できます。

――夜に買い物をする時間がないビジネスパーソンにとって、オフィスの近くなどに八百屋が来るとありがたいですね。

太田:産直野菜の販売は生産者にとってもメリットがあります。これまでは固定店舗を構えて販売するのが主流でしたが、それだと前述のようにコストがかかります。その点、移動販売車を使えばニーズの高い場所や時間に出店できます。

――そのモデルは野菜の販売以外にもいろいろ応用できそうです。

太田:たとえば、アパレル向けの活用にも取り組み始めました。ECサイトからの購入が普及していますが、やはり現物を見たい、試着をしたいというニーズは根強くあります。

コロナ禍で固定店舗の運営は厳しくなっていますから、展示や試着のために移動販売車を出して商品の購入はECサイトで、という流れを確立できれば効果的だと考えています。

そんな幅広いサービスに対応できる移動販売車「MOBIX(モビックス)」を開発し、販売やレンタルなども含めた取り組みを拡大しているところです。


MOBIXレンタカーのショーケース搭載車両

――サービスの規模は今後も広げていく方針でしょうか?

太田:今年に入って登録事業者数が1000件を超え、今も右肩上がりに伸び続けています。目下の課題は、営業できる場所を確保して、移動販売車が活躍する場を広げることだと考えています。

Webサイトを強化して問い合わせ件数を増やしたり、不動産デベロッパーに出店場所の企画を提案したりすることに注力して、今後もサービスを拡大させていく考えです。

「店に行く」が「店が来る」に変わる

――「モビマル」や「MOBIX」の展開を通じて気づいたことはありますか?

太田:活動を通じて感じるのが、「店に行く」ことが意外と負担になっていることです。たとえば、かつて開発されたニュータウンは過疎化が進み、採算が取れない店舗の撤退が相次いでいます。結果「買い物難民」が増加している現状があります。

「モビマル」や「MOBIX」を展開して「店が来る」場所を増やせれば課題解決に役立つのでは、と考えています。

――家の近くでにぎわう場所が増えると、それだけでも楽しいですね。

太田:街のにぎわいを生み出すことで、地域のコミュニティづくりにも貢献できます。よく移動マルシェに来てくれるお年寄りに話を聞いてみると、「ここに来るといろんな人に会えて、おしゃべりできるから楽しい」と言うんです。

同じことは孤立しがちな子育て世代にも当てはまると思います。マルシェを運ぶことは、新たなコミュニケーションを生みだす力がある、と感じました。

――「店に行く」から「店に来る」への変化が地域にもたらす影響は大きいですね。

太田:店が移動できるこのモデルには、大きな可能性があります。業態や提供スタイルをどんどん拡張して、地域創生にも貢献したいと考えています。移動販売を通じた地域創生のアップデートが、私たちの目標です。

(文・和田翔)
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