その緊急事態を、ITやアプリの力で解決しようという試みが、京都大学とCoaido(コエイド)の共同開発中の新アプリ「AED SOS」でされている。
人命救助の現場で将来役立つアプリを開発しているスタートアップ企業、Coaido株式会社の代表取締役 CEOの玄正 慎氏に話を聞いた。
■心停止の現場の厳しい現実とITの力
Q、ずばり、「AED SOS」とはどのようなサービスですか?
「AED SOSは、心停止の現場にすぐに付近の救助者を呼んで命を救うためのSOSアプリで現在開発を進めています。心停止者の救命は時間との勝負であり、救急車を待っているだけでは手遅れになります。そこで周囲にいる救命知識のある方にすぐに知らせて来てもらい適切な処置をしてもらう、またAEDを届けてもらい助かる命を増やすことを目指しています。
AEDは心停止者に電気ショックを与えて正常な心拍を取り戻すための機械で、一般市民が利用できるAEDが全国で35万台以上も設置されています。弊社の試算では、AEDの使用率が1%上がれば助かる命が年間で74人増えると想定しています。現状のAED使用率は3.7%と非常に低いので、素早くAEDを届ける仕組みを作ることでAED使用率を数%上げることは可能だと考えています。」
Q、そもそも、どのような経緯でこのサービスを始める事になったのでしょうか?京都大学とCoaido(コエイド)の共同開発に発展した経歴と共に教えてください。
「参加したハッカソンのテーマが「20秒で課題解決するサービス」だったことがきっかけです。20秒でできる一番大きなことは人の命を救うことではないかと思い、救急救命の課題について調べました。
そこで心停止者が年間7万人以上もいて、そのとき街中にあるAEDがあまり活用されておらず、その結果9割の方が亡くなっているというデータを見て衝撃を受けました。同時に、この問題はITをうまく活用すれば解決できると考え、スマホの位置情報を使い周囲にSOSを発信するアプリ「AED SOS」を考案しました。
ハッカソンの後、アプリの実現に向けて活動を続ける中で、本当にこのアプリを社会に広めるためには、心停止者救命の分野の専門家の協力が欠かせないと考えました。
そこで医師であり、心停止者救命に関する研究や心肺蘇生講習、AED普及の啓発などにおいて日本で中心的に活動されている京都大学の石見拓准教授に相談させて頂き、共同研究として進めていく運びとなりました。」
■将来的には、119通報と連携を
Q、ただいま、開発中のアプリですが、現在の所で苦労している点はありますか?
「アプリの性格上、ユーザーは無料で使える必要があります。将来的に自治体の消防指令センターに119番通報と連携できるシステムを提供することで収益を上げて行く計画ですが、それまでには時間がかかりますので、初期段階の開発・運営資金の調達が課題となっています。」
Q、このアプリがリリースされたら、ユーザーにどのように使って頂きたいですか?また、導入する事でどのような利点がありますか?
「一般の方には、いざというときにSOSを発信できるようにダウンロードしておいて頂き、またこの問題に関心を持って頂くきっかけとなればと思います。
救命講習を受講された方や、医療の知識がある方は、SOS受信者として登録して頂き、近くで心停止が起きたときに救命に協力して頂きたいと思います。
突然の心停止はいつ誰に起こっても、いつ自分の目の前で起こってもおかしくありません。このアプリが普及することには、そうした事態にいつか自分が直面したときに助けが来てくれて、命が助かる可能性がこれまでより高くなる社会が実現できるという利点があります。」
■クラウドファンディングでサポーターを募集中
Q、現在クラウドファンディングでサポーターを募集中との事ですが、御社への資金援助を考えている皆様にアピールをおねがいします。
「1口3,000円からのご支援で、支援頂いた方にはサポーターグッズなどの特典をお送り致します。ご支援頂いたお金はサポーターグッズ制作費等を除き、アプリの開発・運営費として使わせて頂きます。ご支援、応援を宜しくお願い致します。」
このプロジェクトは現時点で、50万円あまりの資金が集まっている。スポンサー募集終了まで 34 日。人命救助の観点から応援し、普及させていきたい。
AED SOS
(Writer: Saera Jin)