このようななか、三井住友DSアセットマネジメント株式会社は、マーケットレポート「今年を振り返るキーワード3 『EV』シフト元年」を発表。2021年を「脱炭素社会やカーボンニュートラルへの公的な動きが世界的に見られた1年」としています。
国を挙げた取り組み
各国政府による脱炭素社会の実現に向けた積極的な発言や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書やCOP26において、地球温暖化に対する強い警戒感が示されたことなどが記憶に新しい2021年。こうした流れは、自動車メーカーがEVを推進する後押しになっています。ポイントを2つに分けて、詳しく見ていきましょう。
まずは、日本や欧州が新車販売における電動車100%に向けた方針を発表したこと。2015年に採択されたパリ協定では、全ての参加国に地球温暖化の主因である二酸化炭素(CO2)の排出削減の努力を求めています。
日本の状況はというと、2019年度のCO2排出量構成で、全体の18.6%を運輸部門が占め、そのうち86.1%は自動車によるものとなっており、脱炭素において自動車メーカーの動向は非常に影響が大きいと考えられます。
今年発表された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の改訂版によって、2035年までに乗用車の新車販売での電動車100%の実現を掲げることに。また欧州では、欧州委員会が包括的な気候変動対策として、2035年以降の新車販売を排気ガスの出ないゼロエミッション車にする方針を示しました。
自動車各社の取り組み
もう一つのポイントは、自動車各社の取り組みも積極化していること。各社は、EVを主軸とする計画を次々と発表しました。例えば、12月14日(火)、トヨタ自動車はEVへの投資を大幅に引き上げると発表。2030年のEVの世界販売目標を年350万台とし、5月の計画の同200万台(燃料電池車(FCV)込み)から拡大しています。また、電動自動車の研究開発や設備投資として2030年までに8兆円を投じる予定です。このうち半分の4兆円はEVに、さらにその半分の2兆円は電池に投資される見込みだといいます。
そのほかにも、独メルセデスベンツは2030年、米ゼネラル・モーターズは2035年、ホンダは2040年までに、それぞれ全ての新車販売をEVやFCVにする方針を示したほか、独フォルクスワーゲンは2033〜35年にも欧州でのエンジン車の生産を終了し、事実上EVに全面移行すると発表。
まさに今年は、各社がEV普及に向けて本格的に始動した“「EV」シフト元年”と言えるでしょう。
今後の展望、異業種からの参入も相次ぐ
このような動きもあり、新車販売に占めるEV比率は飛躍的に増加。EV化が進む欧州ではおおむね1〜2割程度から、多い国では8割程度にまで拡大しています。また最近では、既存の自動車メーカーにとどまらず、米アップルや台湾鴻海精密工業、ソニー等異業種からの参入表明が相次いでおり、今後もEVをめぐる動向から目が離せないでしょう。
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(文・和泉ゆかり)