ちなみにJAXAは、2030年代以降に月面インフラを構築し、持続的な探査を目指す構えですが、当面は月に衛星測位システム(GNSS)がないことを想定しているため、電波を必要としない「picalico」が採択されたと思われます。
「picalico」による位置測位
「picalico」は、赤・緑・青の3色を発光できるLEDとその光を受信(撮影)するカメラで位置測位を行うシステム。色の変化パターンの違いで、約106万通りの情報を伝えることができます。また、色が変化する「点」を信号とすることで、1台のカメラで最大100信号を同時に受信可能です。色の変化で信号を伝える「可視光通信」のため、電波が使えない場所での無線通信手段としても有効。さらに、電波方式の測位で問題となる環境の変化などの影響によるブレが生じないのも特徴でしょう。
「picalico」による位置測位には、「カメラ移動型測位」と「カメラ設置型測位」があります。カメラ移動型測位は、自由度の高い低価格なLEDを設置してカメラの位置を推定する方法。一方、カメラ設置型測位では、カメラの広い画角を利用して、同時に複数の移動するLEDの位置を推定することができます。
野球場をクレーターに、トラクターを探査車に見立てて
そんな「picalico」を活用した位置測位の実証実験が、神奈川県相模原市のサーティーフォー相模原球場にてスタート。期間は、2021年11月29日~12月3日です。同実験では、月のクレーターに見立てた野球場のフィールドを、産業用カメラ搭載のトラクターが月面探査車のように移動。観客席に複数のLEDを設置し、そこから発せられる可視光通信の信号をトラクターのカメラで捉え、それらから算出する位置情報データの精度を確認します。
なお、実験は一般には非公開で行われますが、JAXA宇宙探査イノベーションハブのTwitter(@JAXA_TansaX)に実験の模様が投稿されるようです。
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カシオ計算機株式会社
(文・Higuchi)