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言葉の壁を突破! AI翻訳機開発者に聞く、これからの外国語コミュニケーション

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翻訳機を使うと変な文章に翻訳されてしまう、そんな経験をしたことはありませんか。そのたびに、「外国語が話せたら……」と意気消沈したり、外国語のサイトを読むのを諦めてしまったり。それが今、AI翻訳機の登場により変わりつつあります。

今回は、世界中で利用されているAI翻訳機「ポケトーク」の生みの親、技術戦略室 常務執行役員 兼 CTO 川竹 一氏に、これからの外国語コミュニケーションについてお話を伺ってきました。

AI翻訳機ポケトークの精度が高い理由

ーーコロナの影響で国内外を行き来することは減ってしまいましたが、ポケトークはどんなシーンで使われていますか?

川竹 :例えば、公共機関、役所や学校、郵便局の窓口や病院などさまざまなところで使っていただいています。このような生活に密着している場所は、さまざまな国の方が利用します。しかし、すべての言語に対応できる人を配置するというのは現実的ではありません。こういった問題を、ポケトークは解決できるんです。

アメリカでは医療機関にポケトークを850台寄付したことを評価いただき、新型コロナウイルス感染拡大に対し貢献した企業として、Newsweekの表紙にポケトークのロゴを掲載いただきました。

ーーすごいですね。ポケトークを活用しているのは、日本だけではないんですね! 医療機関や役所などでは日常生活で使わない専門的な単語も多いので、言葉がわからないと不安になりますよね。

川竹 :はい、異なる言語を母国語とする人同士が会話する場合、どこでも役に立つと思います。

ある程度外国語を話せたとしても、ちょっと込み入った話をしたいときやそれぞれの国の文化の違いで話がよくわからないと思ったとき、ポケトークがあれば意思の疎通ができます。つまり、ポケトークがあることによって、これまでできなかった会話が互いの母国語でできるようになるんです。

ーーTechableの編集部にポケトークを持ち込み、みんなで使わせていただきました。その際、あえて難しい文章で翻訳を試してみた結果、かなり翻訳の精度が高く驚きました! なんでこんなに精度が高いのでしょうか。

川竹 :ポケトークの翻訳精度の高さは、クラウド上のAI(人工知能)により実現しています。

私たちは世界中からさまざまな翻訳エンジンや音声認識エンジンの情報を集めています。言語のセット、例えば、日本語と英語、中国語とベトナム語など、言語の組み合わせによって各社のエンジンの精度が異なるため、一通り翻訳精度のチェックを行ない、言語の組み合わせごとに高精度に翻訳ができるエンジンを採用しています。

Google翻訳やDeepL翻訳など、採用するエンジンは複数あり、製品を発売した後も最適なエンジンを探し、改善を続けています。

また、ポケトークには今までに3つブレイクスルーがありました。

1つめは、世界中でつながる高速通信(4G)が普及したことです。これにより、グローバルSIMを内蔵したポケトークは世界各地で使えるようになりました。

それ以前は、渡航先で通信手段を確保する必要がありました。世界中でつながる高速ネットワークができ、場所を選ばずに使えるようになったことが1つめのブレイクスルーですね。

2つめは、ディープラーニングが実用化され音声認識や翻訳精度も高くなり、翻訳機として実用的なレベルになったことです。

そして3つめは、スマートフォンの普及です。スマートフォンを大量生産するために部品の値段が下がったことで、2年間の通信費込みで3万円という低価格でポケトーク提供できるようになりました。

ーーなるほど。そのような理由から、高性能の翻訳機がリーズナブルな価格で提供できるわけですね。ポケトーク対応言語の中で「この言語は大変だったな」という言語はなんですか。

川竹 :日本語ですね(笑)。

ーー即答ですね! 日本語ですか。

川竹 :はい、とても大変でした(笑)。

日本語は、ひらがなや漢字以外にも、アルファベットやカタカナもあり、それらを組み合わせないときれいな文章になりません。

多くの言語は表音文字のため大体同じ読みになりますが、日本語は漢字ひとつとっても、読み方が複数あり正しく発音ができないことがあります。さらに、略語やオノマトペなどもあり……日本語は本当に難しいですね。

日本語を翻訳したり理解して発音するAIを作ったりする場合、日本で作られているエンジンのほうがスコアが高くなります。

日本語話者は世界でも1億人ほどしかいないので、大事にしていかないと日本語を翻訳するテクノロジーがなくなってしまいますよね。

ーーなるほど。日本で作られているというのも、精度の高さの理由につながってくるんですね。

外国語学習はこれからも必要なのか?

ーーお話を伺ってきて、そして実際に体験させていただいて、ポケトークの精度の高さを実感しています。ここまで翻訳機の精度が上がると、個人的には語学学習の必要性はなくなってくるのでは? と思ってしまいます。しかし一方で、ポケトークには「会話レッスン機能」という語学学習のための機能が搭載されていますよね?

川竹 :AIと会話する会話レッスン機能ですね。ポケトーク・ユーザーにどんな機能が欲しいかアンケートを行なった結果、1人でも会話練習ができる機能が欲しいという意見がありました。ポケトークがあっても入国審査など自分で英語を話さないといけない場面は緊張してしまう、ということのようです。

語学をきちんと勉強するのであれば文法や単語を学習しないといけないため、それは専用の教材で勉強したほうがいいと思います。けれど、それらでは会話の相手をしてくれない。ポケトークにはマイクとスピーカーがあるので、とっさの一言を練習できる機能として搭載しました。

ーーなるほど。

川竹 :それとは別に、語学学習にポケトークを使うことはとても役に立ちます。

ポケトークを持っていれば、伝えたいことを英文に翻訳でき、さらに音声で聞くことができます。また、自分で作った英文をポケトークに向かって話してみることで、発音の確認やちゃんと伝わるかどうかの発音練習もできます。

電子辞書の場合、文章の中の単語を調べることはできますが、作文はしてくれません。偶然、調べた単語の例文に伝えたい内容と似たものがあれば、それをアレンジして作文できるかもしれませんが、英語を自習するうえでその文章が正しいかどうか検証する方法はないですよね。

日常生活の中で思ったことや知りたいことなどを学習している言語でポケトークに話しかけたり、逆に、日本語で話しかけて翻訳結果を確認したりすることで、表現を知り、身につけていくことができます。これがとても勉強になり言語の習得が速くなるため、特におすすめの学習方法ですね。

ーーなるほど。ポケトークは翻訳だけでなく語学学習にも役立つんですね。やっぱり翻訳技術が進化しても外国語を話せるという価値は変わらないのでしょうか。

川竹 :生活の中でどのくらい他の言語を必要とするか人によると思いますが、私は、英語は勉強したほうがいいと考えています。

会話をするために必要というだけではなく、インターネット上では、日本語で書かれているサイトよりも英語で書かれているもののほうが圧倒的に多く、それらのサイトから情報が得られることを考えると英語を勉強したほうが得です。なので、英語は勉強して習得し、他の言語は機械に頼るというのがいいのではないかと思います。

ーーなるほど。ポケトークがあると世界が広がりますよね。

川竹 :そうですね。ポケトークには「グループ翻訳」という複数のポケトークをつないでコミュニケーションがとれる機能もあります。

LINEのようにグループを作成し、ポケトークに向かって話すだけで、グループ参加者にメッセージが送れます。送ったメッセージは、相手が設定する言語で表示されるので、グループ内に複数の言語の話者が参加している場合でも自国語で話すだけで、グループ参加者全員に伝わります(82言語対応)。

また、「ポケトーク字幕」というポケトーク専用のパソコンソフトを無償で提供開始しました。この「ポケトーク字幕」をインストールしたパソコンとポケトークを連携することで、ZoomやMicrosoft Teams、Google Meetなどのリモート会議システムの画面上に、翻訳結果を字幕のように表示できます。

海外の方と通訳を介してオンライン会議や商談を行なう場合、自分が話し、それを通訳の方が翻訳して伝えるので、コミュニケーションに倍の時間がかかりますが、ポケトーク字幕であれば瞬時に変換されすぐに字幕のように表示されるので、テンポ良くコミュニケーションできます。

ーー面白いですね! 聞こえてくる言語はいろんな種類の言語なのに、会話が通じているという(笑)。

川竹 :さまざまな国の方とのコミュニケーションにおいて、「言葉の壁」ってありますよね。「言葉の壁」は、その言語が話せない、わからないという意味の「壁」でもありますが、会話に通訳を介すことで生じる時間、外国語を話すことが恥ずかしいなど、言語そのものだけではなく、さまざまな要素があると思います。

その中でも「伝わるまで時間がかかる」「人の力を借りなければいけない」というところは結構大きい壁で、この点に関してはポケトーク字幕がブレイクスルーになったと思っています。

ーーなるほど。「言葉の壁」のになっているのは、言語そのものだけではなかったんですね! 例えば、コロナが落ち着いて海外に行ったり、日本にもたくさん外国の方が来てくれるようになったりという状態が戻ってきたとします。そのとき、ポケトークなどの翻訳機を活用することで、その「言葉の壁」はどのように変わると思いますか。

川竹 :少なくともポケトークを持っていると、話すときの躊躇がなくなると思います。これはいちばん大きなポイントで、特に日本人はシャイな方も多く、英語が話せるのにあえて話さない方もいます。

日本人が自分の意見をあまり言わないので、外国の方に「この人はどう思ってるんだろう」と思われてしまっていることがあるようです。それが、ポケトークを介すことで自分の考えをきちんと言えるようになる。機械を使ってでも一生懸命何かを伝えようとしている姿って、相手にとっても嬉しいと思うんですよね。

また、言葉の壁がない状態というのは必要な情報へのアクセスがしやすくなる以外にも、例えば、訪日外国人の方に商品の説明ができることでモノが売れて経済の活性化につながるなど、社会貢献にもなると思っています。

ーー面白いですね! ポケトークを持つことは自己表現のひとつにもなってくるんですね。これからは、母国語、英語だけでなく、もっとたくさんの言語を操って視野を広げていける気がします。

(インタビュー・安室和代)

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