ある意味、プリペイドの料金プランに近い形で、ユーザーが自分に合わせて料金をカスタマイズできる点はオンライン専用の料金プランならではです。
契約するだけなら一切料金がかからないpovo2.0ですが、そのままだと、データ通信の速度が128Kbpsに制限されています。これでも通信できないわけではありませんが、画像などの読み込みにはかなりの時間がかかり、サイトによってはタイムアウトしてしまうことも。きちんと使いたいときには、データ容量をトッピングとして購入する形になります。
利用量に合わせた「トッピング」を選択
料金水準は、他社のオンライン専用料金プランに近くなっていますが、バリエーションは多彩です。データ容量のトッピングには1GB(7日間)、3GB(30日間)、20GB(30日間)、60GB(90日間)、150GB(180日間)の5つと、24時間データ通信が無制限になるものが用意されています。1週間ずつ1GBを買い足していってもいいですし、約6月分をまとめ買いしてもいいというわけです。料金は1GBが390円、3GBが990円、20GBが2700円です。ここまでは他社と大きくは変わりませんが、60GBは90日間で6490円で、1カ月にならすと20GB/2163円となり、割安感が出てきます。さらに、150GBは1万2980円で、1カ月あたり25GB/2163円とデータ容量が増えます。先々のデータ容量をまとめ買いしておけば、料金をさらに節約することができる格好です。トッピングは一般的な携帯電話のプラン変更より簡単なので、ある月は3GB、別の月は20GBといった形で、利用量に合わせた選択がしやすいのもメリットです。
データ容量以外では、550円の「5分以内通話かけ放題」や、1650円の「通話かけ放題」といったトッピングも用意されています。これらは、データ通信のトッピングを購入する必要なく利用できるため、音声通話専用の料金プランを組み立てることも可能。アプリの操作が必要になるハードルはありますが、電話中心だったシニア世代に合わせた使い方も可能。こうした柔軟性の高さは、povo2.0ならではのポイントと言えそうです。
商品購入時にデータ容量が特典として付いてくる
何らかの商品を購入した際に、データ容量を特典としてもらえるキャンペーンも開催されています。「ギガ活」がそれです。現時点ではローソンやすき屋、ドトールコーヒー、丸亀製麺といったショップがギガ活に対応しており、au PAYにあらかじめau IDを紐づけておくと、決済時に500円につき300MBのデータ容量がプレゼントされます。サロモンやリーボックのように、決済手段を問わずにデータ容量をもらえるショップも用意されています。ギガ活のデータ容量は300MBだと3日間、1GBだと7日間と比較的短く設定されていますが、受け取れる回数に制限はありません。そのため、日用品の購入や飲食をするだけで、どんどんデータ容量がたまっていきます。キャンペーンという枠組みである以上、急に終わってしまう可能性もありますが、現時点ではギガ活を駆使すれば、トッピングの購入をしなくてもpovo2.0を使い続けることが可能。通信料0円での維持も不可能ではありません。
KDDIの思惑とは
こうした仕組みが受け、利用者は先代のpovo1.0と合わせて100万契約を突破しました。KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏によると、開始から1カ月で10万契約以上を上乗せできたとのこと。高橋氏は「非常に順調に立ち上がっている」と自信のほどをうかがわせました。オンライン専用プランとして、他社と差別化を図れたことも奏功したようです。基本料金をあえて0円に設定したのは、1GB以下の料金を無料にした楽天モバイルに対抗する狙いもあったといいます。高橋氏は、「0円から始まる(楽天モバイルの)段階型料金の影響があったことは間違いない」としながら、「UQ mobileの強化によって(流出を)一段止め、止めきれない部分はいろいろと考え、povo2.0を入れた」と語ります。その目論見は当たり、KDDIグループから楽天モバイルへの流出はかなり抑えられてきたといいます。
もっとも、ユーザーの利用料が0円のままだと、いくら流出を抑えてもKDDIは収益を上げることができません。ユーザーを引き留められても、これでは意味がありません。
とは言え、当初加入しているのはアクティブなユーザーが多く、「2、3週間すると、大体2/3から3/4ぐらいがトッピングをつけている。ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)はUQ mobileより高いぐらい」(同)と、収益的にもプラスになっているようです。ただし、お試し感覚のユーザーが増えていけば、ARPUは徐々に下がっていく可能性もあります。ユーザーがいかにしてトッピングを使ってもらうかは、今後の課題と言えるでしょう。
(文・石野純也)