VRで歩行者シミュレーションを実施
同大学の研究チームが行った実験は、「ドリフト拡散」と呼ばれる意思決定モデルが、歩行者が直面する様々なシーンにおいて予測モデルとして機能するかどうか、というもの。例えば、「自動車が接近しているとき、歩行者がどのようなタイミングで道路を横断するか」や、「信号がない道路で、自動車が歩行者に道を譲るのはどのようなときか」といったシーンです。この意思決定モデルを実験するために、研究チームはVRを使用して大学独自の歩行者シミュレーターに参加者を配置。立体的な3D仮想シーン内を自由に歩く実験参加者の動きを、詳細に追跡します。そして参加者は、「安全だと感じたらすぐに道路を横断する」ことを命じられました。
実験を重ねていくと、参加者は徐々に自動車の距離・速度・加速度合い・コミュニケーションなどの感覚的なデータを蓄積することで、いつ交差するかを決定しているということがわかりました。つまり、リーズ大学研究チームのドリフト拡散モデルが、歩行者が道路を横断し始めるかどうかを予測できる可能性を示していたといいます。
人間はエビデンスを収集し横断する
この予測モデルが機能すれば、自動運転車は、「交通の動き」や「点滅するライト」といった外部信号をデータとして収集し、歩行者とより効果的に通信できるようになり、事故発生の低下につながることになります。私たちは道路を歩くとき特に深いことを考えずに横断していますが、リーズ大学のGustav Markkula教授は、「人間が道路を横断することを決定するときは、自動車の距離と速度だけでなく、減速具合や、ヘッドライトの点滅といった様々な情報を自動車からの通信の合図として活用し、これらをエビデンスとして積み上げている」といいます。
「例えば、自動車が歩行者に道を譲るとき、歩行者はその自動車が『本当に停止するのかどうか』がわからず、自動車がほとんど完全に停車するまで立ち往生してしまうことがあります」と話す同氏。人間のこういった性質を理論としてモデル化し、自動運転車に学習させることで、円滑な歩行者とのコミュニケーション(=道の譲り合いなど)が可能になるとしています。
Making self-driving cars human-friendly
(文・Takeuchi)