一口にサイト運用と言っても、業務は多岐に渡ります。大きく分けると、サイトに最新情報を掲載するための更新、保守業務やコンテンツ制作といった守りの運用。そして、サイトに人を集め、数値を分析し仮説検証して「Webサイトを育てる」攻めの運用。
後者の「Webサイトを育てる」運用に関しては、なかなか実行に移せていない企業が多いのが現状です。
株式会社プレイドの提供する「KARTE Blocks」はこの課題にアプローチする新しいサービス。今回は同社の事業を推進する大東寛明氏へのインタビューを通して、「KARTE Blocks」の特徴について解説します。
企業のWebサイト運営が軌道に乗らない3つの制約
――昨今のコロナウイルス感染拡大により、改めてWebサイトの重要性が見直されています。その一方でサイトをうまく運営できない、育てられないという企業も少なくありません。この、「サイトを育てる」ことの重要性についてどのようにお考えでしょうか。大東:Webサイトを育てる、つまりサイトを最新状態に保ち、数値から課題を発見し、仮説を検証してパフォーマンスを向上していくという考え方は以前からありましたが、近年は特にその重要性や緊急性が高くなってきています。
Webサイトにはユーザーに価値を届ける、あるいは情報発信のチャネルとして使うといった役割があります。ただ、生活者がより多面的に情報を取得するようになり、さらにはコロナ禍で半強制的にオンライン接点が中心となったことで、サイトに求められる役割の変化も加速しているんです。
従来通りのサイト運用ではスピードと自由度に限界があるため、ユーザーの期待値に追いつけずにサイトが陳腐化し、「自分に関係のない情報が多すぎる」「知りたい情報にすぐにたどり着けない」といったマイナスの印象を与えるかもしれません。
Webサイトへの期待値が高まっている今こそ、利用者のニーズを敏感に捉え、素早くサイトをアップデートしていくことが非常に重要だと思います。
――Webサイトを育てる重要性を頭では理解していても、なかなかそれを実行に移せない企業が多くあります。これはなぜでしょうか。
大東:Webサイトの運用が軌道に乗りづらい背景には、大きく3つの問題があります。そして、それらが複雑に絡み合っているのが原因だと言えます。
1つ目は人材の制約。Webサイトの構築や編集に必要な知識がないと、ちょっとしたテキストや画像の変更もできませんよね。要するに、誰でも簡単にサイトを扱えるわけではない、という制約です。
2つ目は組織の制約。簡単にサイトの編集・更新ができない以上、変更のたびに社内エンジニアや制作会社に依頼をしなければなりません。しかし登場人物が増えてくるとやり取りが増え、その分開発期間やコストがかかります。こうなってしまうと、サイトを育てる重要性は理解しつつも、やらない理由のほうがすぐに出てきてしまうんです。
3つ目が技術的な制約。ツールを活用して今ある課題を解決しても、時間の経過によって課題が変化すれば対応できなくなります。発生する複数の課題に対して部分最適でツールを使うと、中長期的には仕組みが複雑化し技術的な負債となり、簡単に扱えなくなる。結果、扱える人・チームも分断されてしまいます。
このように人材的、組織的、技術的な制約が絡まることによって、サイトを育てることが難しくなっているんだと思います。
また、近年ではWebサイトが単なるユーザーとの接点ではなく、サービスの主軸、ハブのような役割になってきています。サイト運営者は、単純にサイトを更新する作業だけでなく、1つの取り組みが周辺業務にどのように影響し合うかを広く深く理解して運営する必要がある。
その結果、サイトを育てる取り組みのハードルも高く感じてしまう。これもまた原因のひとつかもしれません。
誰でも直感的にWebサイトを扱える「KARTE Blocks」
――これらの課題を解決するのが「KARTE Blocks」ということですね。まずは「KARTE Blocks」のコアであるBMS(Block Management System)について教えてください。大東:BMSは、タグを一行追加するだけで、今あるサイトを「ブロック」という要素に分解し、直感的に更新・評価・改善できる新しいサイト管理システムです。例えばテキストや画像、ボタンなどをひとつのブロックとして扱うことが可能です。
ブロックごとに内容を変更できるのはもちろん、これまで別々のツールで行っていた分析・評価やABテストによる改善、さらにパーソナライズまで「KARTE Blocks」を使えば一気通貫で対応できます。
これまでのWebサイトは、サイト全体の設計から構成しているページ、その中のブロックという観点で、大きなものから考えていきましたが、「KARTE Blocks」はその逆。サイトを構成しているブロックという単位から積み上げてアプローチしていくという観点はユニークな特徴かな、と。
――ブロック単位で変更ができるとありますが、これはWebの知識がない人でも簡単にできるのでしょうか?
大東:先ほど、人材の制約の部分でもお話しましたが、KARTE Blocksはサイトを扱える人をエンジニアに限定せず、誰でも自由にサイト運営ができることが重要だと考えて開発しています。HTMLやCSSがわからない方でも、ノーコードで直感的に変更することができます。
――BMSを使うことで人材の制約が解消できるということですね。残り2つの制約も解消できるのでしょうか?
大東:ノーコードで扱える、つまり誰でも簡単にサイト運営に関わることができるようになるので、担当者の皆さんがやりたいと思ったことがすぐに実行できるようになります。例えば細かなテキスト修正をするために外部にお願いしていたことが自分たちでできるようになるので、調整コストが不要になり、組織的な制約が解消されます。
また、BMSはWebサイト運営のコアになる部分、更新や分析、改善などが1つのツールで対応できるので、これまでのように「サイトの更新はこのシステム、分析はこのツールを使って……」といった技術的な制限がなくなります。これらの制約がなくなることで、より滑らかにWebサイト運営に向き合っていただけます。
さらに「Webサイトを育てる」という観点で言うと、サイトを更新することがどれくらい意味があるのか、どんな影響があるのかを、BMSを使うことで定量的な数字として見ることができます。
例えば更新した部分に何人がアクセスした、クリックしたというのが数字で見えれば、Webサイト更新の重要性がより明確に理解できますよね。
担当者のノウハウや知見も蓄積されるので「次はこんな施策をやってみよう」「ここは重要度が低いので他のところを変えよう」など、Webサイト更新への向き合い方もアップデートするきっかけになると考えています。
――効果が見えると重要性も理解できるし、担当者のモチベーションも上がりそうですね。
大東:そうですね、Webサイト更新に対する担当者と決裁者の認識のズレも、BMSを通じて計測数値と具体的なアクションを共有することで解消できると思います。
サイトの価値を高めるマーケティングツールとしても利用可能。しかも無料!
――「KARTE Blocks」はWebサイトの管理更新だけでなく、マーケティングツールとしての側面もあるとのことですが、具体的にはどういったことができるのでしょうか?大東:サイトパフォーマンスを向上するための機能としては、大きく「分析」「仮説検証」「パーソナライズ」の3つがあります。
まず「分析」ですが、「KARTE Blocks」に登録したブロックについては、何人に表示された、どれくらいクリックされた、何個購入されたといったサイトの重要指標に対する効果を自動的に収集しています。
ページごとの数値はGoogle Analyticsなどを利用して計測することができても、ページ内のリンク一つひとつの指標を計測しようとすると、設定や実装、運用が手間となり、なかなか分析まで手が回らないというケースが多いんですよね。
「KARTE Blocks」を使えば簡単に数値を見ることができるので「この部分を変えよう」「ここはより良い見せ方のテストをしてみよう」といった次の施策につなげていくことができます。
2つ目の「仮説検証」はいわゆるABテストです。ブロック単位でABテストを実施できるので、例えば「無料プランで試してみる」「無料プランを利用する」といった細かな文言の比較や、少しだけ色を変えるデザインテストなどをスピーディーに実施できます。
――簡単にブロックの内容を変えられるので、ちょっとしたアイデアも軽い気持ちで試せそうですね。
大東:そうなんです。従来だと、外部に変更依頼して、数週間かかって実装して、いざテストしてみたらイマイチだったので元に戻さなくてはならない……みたいなことが起こるので、ABテストひとつ実行するにも大きなリスクが伴っていました。
そこを「まずやってみよう」と試していただけるようになるので、日々の業務にも大きな変化をもたらすと思います。
3つ目の「パーソナライズ」、これはかなりユニークな切り口だと自負しています。
例えば、初めてWebサイトに来てくれたユーザーには、サービスの特徴やチュートリアルのような初心者向けコンテンツを見てもらいたい。頻繁に来られるユーザーには新商品やサービスを紹介したい。すでにご契約いただいているユーザーにはサポートを案内したい。こういうニーズは多いと思います。
しかし、ほとんどのWebサイトは基本的に誰が来ても同じ内容が表示されるのが当たり前。Webサイトの役割が時代に合わせて変化し、ユーザーへの接点が多様になっているにもかかわらず、です。
「KARTE Blocks」を使えば、初めてのユーザーにはメインビジュアルを変えたり、要点を押さえたわかりやすい内容に差し替えたり。訪れる方にとって使いやすいサイトを実現することができるのではと考えています。
実際に、KARTE Blocksを導入いただいている女性下着を扱うECサイトにおいて、初回来訪のお客様に限定して「おすすめ下着の診断コンテンツ」への導線バナーを配信したところ、クリック率は約132%向上、購入率も約42%向上したという事例もあります。(参考:【パーソナライズ】KARTE Blocks活用事例集)
――機能盛りだくさんの「KARTE Blocks」、先日無料プランが発表されましたが、無料プラン開始の背景と内容について教えてください。
大東:今回の無料プランは、BMSの価値を体感いただくために、基本機能はすべて利用可能となっています。設定ページの月間合計PV数といった管理上の制限はありますが、更新・分析・ABテスト・パーソナライズといった機能に関しては、無料プランで全てご利用可能です。管理上の制限を超えなければ期間制限なく無料でお使いいただけます。
BMSはタグを一行追加するだけで、どのように構築されたサイトでも使うことができ、さらに今回無料プランをご用意したことで導入のハードルを大きく下げられたと思います。
これまでお話しした通り「KARTE Blocks」の根幹にはBMSという新しいサイト運営の概念があります。この考え方がどんどん広がることで、その結果サイト運営に関わられている方が、創造性を発揮しながら、より楽しくWebサイトに向き合っていただけるきっかけや環境を作りたいという思いがあります。
有償プラン一択だと気軽に導入することができなかった事業者様も、まず無料プランを使ってみて、価値を実感いただけたら有償プランを、と順にご利用を進めていただけます。Webサイトをお持ちのすべての事業者様、すべてのWebサイトで「KARTE Blocks」が使われる、サイト運営のスタンダードを目指していきたいと思っています。
BMSをサイト運営のスタンダードにしていく過程で、サイト運営の課題や向き合い方について、どうあるべきかを皆さんと一緒に考えていければと思います。
(文・川口裕樹)