そこで東大発AIベンチャーTRUST SMITH株式会社は、ロボットが物体を掴む上で最適な位置を学習モデルなしで検出するアルゴリズムを開発・実用化。同社が有するアームロボットのアルゴリズムとの組み合わせなどにより、工場内のさらなる自動化を進めていく構えです。
学習モデル不要の物体認識アルゴリズム
今回実用化された「モデルレス物体認識アルゴリズム」は、深度カメラにより取得した対象の画像に対して、各位置・各角度でロボットアームのハンドを挿入した時に物体を把持できる可能性を評価し、その可能性が最も高い把持方法を探索するというもの。そもそも教師データを学習しないため「学習させていない物体は把持できない」という事態を回避できます。また、把持に適した位置、そうでない位置を定義することで把持に不適切な物体の除去が可能に。加えて、把持可能な物体の中でも把持が難しい把持位置を除去することが可能となるため空掴みといった事象も減らすことができるといいます。
このアルゴリズムを活用することで、労働力不足、作業効率の低下、人為的なミスなどの課題を解決しようというのです。
アームロボットとの組み合わせで……
同社は、「スマートファクトリー」の実現に向け、さまざまなソリューションを提供しています。その中のひとつがアームロボット。2020年11月に、AIを使った障害物回避型アームのアルゴリズムを開発し、特許を取得しました。この障害物回避型アームは、空間内に存在する障害物を回避し、目的物へアプローチすることが可能。アームから見た空間内の物体との距離、相対速度または相対加速度に応じて適切に場を計量することができるため、障害物が動いていても安全に回避しながら目的物に到達できるといいます。これにより、従来人々が手作業で行ってきたあらゆるピックアップ作業をサポートすることができるようです。
また、特許取得から約2週間後には、アームが停止してしまった際に、原点位置まで静止障害物を回避して戻る経路を自動計算するアルゴリズムを開発。従来、停止したアームを原点位置まで戻すための経路はティーチングにより指令していましたが、このアルゴリズムを活用することで経路を自動計算できるため、膨大なコストがかかっていたティーチング業務が不要となります。
今後は、モデルレス物体認識アルゴリズムとアームロボットの経路生成アルゴリズムを組み合わせ、バラ積みピッキングをはじめとした工場内のピッキングシステムを開発していく見込み。加えて、物体認識技術の高度化による高精度化も進め、より高速かつ高精度なピッキングシステムを提供していきたいとしています。
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(文・Higuchi)