そのプロセスで課題となっているのがマンガの翻訳。話し言葉が多く、吹き出しごとに文章が途切れるため、AIによる翻訳が難しく、人による翻訳のコストと負荷が課題のようです。そこで、大日本印刷株式会社(以下、DNP)とMantra株式会社は、マンガに特化したAI翻訳エンジンを開発。独自のシステム「DNPマンガオンラインエディトリアルシステム MOES(以下、モエス)」に搭載することで、翻訳版のマンガ制作の生産性向上を目指します。
翻訳作業時間を30%以上削減
モエスは、翻訳版のマンガ制作に必要な翻訳・レタリング・校正・進捗管理などを行うクラウドシステム。DTPソフトを使わずに、画面上に表示されるマンガのレイアウトを確認しながら吹き出しに翻訳した文章を直接入力できます。従来、入力する文章の翻訳は翻訳者がすべて手作業で行っていました。モエスには、翻訳者や翻訳チェック者間のデータ授受などを容易にする機能はあるものの、やはり手作業での翻訳にかかる負荷とコストは改善の余地があったようです。そこで開発されたのが、マンガに特化したAI翻訳エンジン。これをモエスに搭載することで、あらかじめ自動翻訳された文章が入力された状態から、翻訳者による微調整やネイティブチェッカーによる校正作業を行うことが可能になりました。翻訳会社による評価テストでは、AI翻訳によって翻訳に関する作業時間が、翻訳が難しいとされるジャンルにおいても、従来と比較して30%以上削減されるという結果を得たといいます。
今後の展開
今後DNPは、海外展開の需要が高いマンガの着色や縦スクロール化などの機能開発や体制構築を進め、モエスを軸とした海外版マンガの制作・製造体制を強化する構え。コストと負荷を低減しながら高品質の作品を制作することで、出版社が有するマンガコンテンツの海外展開を支援するとともに、公式コンテンツの海外流通により海賊版の流布防止に貢献したいとしています。先日Techable(テッカブル)でも取り上げましたが、DNPは米国最大手の取次会社イングラム社の子会社であるライトニングソース社と、世界各地の書籍をオンデマンド製造・販売する連携事業「グローバルコネクトプログラム」におけるパートナー契約を締結しました。世界中の出版社から許諾を受ける書籍のオンデマンド製造・販売を世界各地で展開する「グローバルコネクトプログラム」への参画により、世界中のさまざまな書籍を国内で販売できるようになるといいます。
そして同社は「グローバルコネクト」のパートナー各社の製造・流通機能を活用し、日本の出版社から許諾を受けたコンテンツを世界中に提供する「リバースグローバルコネクト」も検討中。出版業界の"グローバル規模"での活性化を図っているように感じます。
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インプレス総合研究所
(文・Higuchi)