ここで挙げたタイトルは、メディアやテレビCMでも目にする機会が多いため、ゲーマーでなくても名前は知っているという人もいるでしょう。一般的にこれぐらいのレベルのゲームになると、開発期間は数年単位、費用も億単位が当たり前の世界になっています。
その一方で、今元気があるのがインディーゲームの世界です。インディゲームは「Independent game」の略称で、個人または少人数のクリエイターで開発されたゲームの総称です。ですので、1人で作成した自作ゲームも対象ですし、コミケなどで販売されている同人ゲームなどもインディーゲームといえます。
では、なぜ今インディーゲームの世界が活気づいているのでしょうか。
UnityやUnreal Engineなどゲームエンジンの進化
「ゲームエンジン」という言葉を初めて目にした方もいらっしゃると思いますが、ゲームを起動したときに「Unity」「Unreal Engine」のロゴや名称を目ことは一度はあるのではないでしょうか。UnityもUnreal Engineもゲームエンジンと呼ばれているもので、ゲーム起動時にこれらが表示されるのは、「こういったゲームエンジンを使って制作されたゲーム」という意味です。
ゲームエンジンとは、「ゲーム開発に特化した統合開発環境」のことを指します。ちょっと前までは、開発するゲームに応じて、グラフィック、サウンド、ユーザーインターフェースなどを独自で開発・実装していました。
しかし、効率が悪いことに加えて、近年のゲーム事情に合わなくなってきました。今やPSやSwitchの同時発売は当たり前ですし、スマホゲームであればiOSとAndroidの両対応も基本になっています。しかし、それぞれ個別に開発していてはとても間に合いません。しかも、最近のゲームは配信後に更新データでアップデートやダウンロードコンテンツを追加することがスタンダード。
こういったことから、共通化できる部分を効率的に開発するというニーズに答えるための環境が必要になってきました。それがゲームエンジンというわけです。
現在主流になっているのは、さきほどの例でも挙げたUnityとUnreal Engine。どちらもアメリカの企業が開発したもので、前者はUnity Technologies、後者はEpic Gamesです。
この2つのゲームエンジンはインターネットから入手できる上、3Dゲーム開発にも対応しているので、かなり込み入ったゲーム開発も可能です。実際、商業的に大成功を納めているタイトルにも採用されている例はあり、あの『ポケモン GO』はUnityをベースに開発されています。
また、世界的に広く普及していることもあって、個人開発で躓きがちな情報などもインターネット上で見つけることが容易に。インディー開発者にとって重要なのはコスト面ですが、どちらのゲームエンジンもいくつかプランがあるものの、基本的には無料で使用可能です。
Among Usのヒット事例
現在、ゲーム配信などで盛り上がりを見せている『Among Us』をご存知でしょうか?2018年に配信されたこのゲームは、昨年あたりから人気が急上昇しています。当初はスマホ向けゲームとしてサービス開始となりましたが、現在ではPCやSwitch、PSシリーズ版があり、ほぼすべてのプラットフォームでプレイ可能です。
Among Usは宇宙が舞台の「人狼ゲーム」。プレイヤーはクルーかインポスターのどちらかに割り当てられ、それぞれのミッションをこなしていくゲームで、騙し合いがカギを握ります。
このゲームは世界的にヒットを続けている本作ですが、数名の開発者のみで制作されたインディーゲームです。最先端の3DCG技術やオーケストラによるBGMなどはありませんが、アイデア1つで世界的に認められるゲームになれるという証明にもなりました。
現在ではゲームのみならず、キャラクターグッズ販売なども好調なようで、夢のあるインディーゲーム成功事例となっています。
コロナ禍による可処分時間増でゲーム制作に
新型コロナウイルスの影響で、巣ごもり需要が増えていることはご存知のとおりですが、ゲームの世界にも影響があります。例えば、「ゲームを視聴して楽しむ層」が増えたことです。これに加えて、ゲームを制作してみようという方も増えています。可処分時間をゲーム開発に充て、販売にこぎつける方もいます。ちょっと前まではインディーゲームはPCで販売というのが一般的でしたが、今では家庭用ゲーム機での展開もハードルが下がっています。
例えば、Switchを例に取ってみると、公式ストアの「ニンテンドーeショップ」には多数のインディーゲームが並んでいます。また、任天堂の「Hello! Indie World」のページでは、インディーゲームの紹介をするコンテンツも用意されているぐらいです。
小学校におけるプログラミング教育が必須化となった現代、こういったインディーゲームの盛り上がりや環境整備によって、新しい世代が考えた画期的なゲームが登場する日が近いかもしれません。
(文・辻英之)