このたび、同社と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」のもと、「小型SAR衛星コンステレーションによる災害状況把握サービスの社会実装」に向けた共創活動を開始。今回は2019年の佐賀豪雨を事例としたSARコンステレーション利用による解析精度向上の実証と、衛星搭載SARの性能向上の実証などを行います。
SAR衛星のコンステレーション(衛星群)構築へ
まずは、シンスペクティブの小型SAR衛星について少し紹介しておきましょう。日本では「合成開口レーダー」とも呼ばれる「SAR」を搭載したSAR衛星は、マイクロ波によって地表面を観測するため、雲に隠れた地表面の観測や昼夜を問わない観測ができることが特徴です。また、シンスペクティブが開発する小型SAR衛星「StriX」は100kg級で大型SAR衛星と比べると重量は約10分の1、開発と打ち上げのコストは約20分の1だといいます。
同社は、2020年12月に初の実証機「StriX-α」を打ち上げ、軌道投入に成功。今後は次の実証機「StriX-β」やそれ以降の後継機を打ち上げ、2022年までに商用機4機を、最終的に30機を軌道に乗せ、コンステレーションを構築する構えです。
2つの取り組みについて
今回の取り組みのひとつが、「StriX-α」や今後打ち上げ予定の小型SAR衛星で取得するデータおよび他衛星などから取得した既存のデータを用いて、災害時状況把握サービスなどの社会実装を推進するというもの。シンスペクティブとJAXA、佐賀県庁、株式会社島内エンジニアの連携により7月から実施されています。この取り組みでは、SAR衛星による安定した高頻度データとAI解析を用いて浸水被害状況を迅速に評価するシンスペクティブのサービス「Flood Damage Assessment Solution(浸水被害モニタリング)」を活用。同サービスでの佐賀豪雨の解析精度の向上実証を行っています。
もうひとつは、SAR観測の高分解能化・広域化を実現する技術検証。この検証は、SARセンサの性能向上を目指すもので、高分解能・広域SAR観測に必要な高出力レーダーの大電力化に係る放電対策の検討をJAXAで行い、「StriX-β」およびそれ以降の後継機を使用して宇宙での技術実証を行う見込みです。
PR TIMES
(文・Higuchi)