結果として、VRヘッドセットを用いて事故現場を確認した陪審員は、判断の一貫性が増したようです。事故現場に没入することで、判断がしやすくなり正確性も増す可能性があります。
VRヘッドセットの導入で判断に一貫性
交通事故や殺人事件について陪審員が正確に判断するうえで、空間認識が重要と考えた研究チームは、ひき逃げ事件を想定し、レーザースキャナーで現場を再構築しました(再構築した現場は動画で確認できます)。VRヘッドセットを用いた参加者と、写真のみを資料として提供された参加者の判断を比較したところ、前者では86.67%が「危険な運転による死亡」と判断。後者では「不注意な運転による死亡」との判断が47%、「危険な運転による死亡」との判断が53%と、ほぼ半々に分かれています。
陪審員の判断の負担も軽減
VRヘッドセットを用いた参加者では判断に一貫性が見られたほか、“写真を用いるより大幅に少ない労力で済んだ”とのことです。世界的にはすでに法廷でVRが用いられた事例があるようで、2019年にドイツのバイエルン州で行われた戦争犯罪裁判では、アウシュビッツ強制収容所の現場がインタラクティブな3D画像で再現されました。
陪審員が現場を訪問して空間認識を得ることもできますが、現場が遠隔地であったり、配置を保存しておく必要があったりとさまざまなハードルがあることから、将来的にVRが法廷に導入されるかもしれません。
参照元:Bringing the jury to the crime scene via a 3D headset/ University of South Australia
(文・山田洋路)