実験の流れと背景
同実験は、同病院のスタッフが出前館のアプリで注文した吉野家の牛丼弁当を温かいうちにドローンで届けるというもの。注文が入ると、吉野家のキッチンカーで調理し、専用ボックスに入れた状態で出前館の配達員によってドローン離陸地点(立石公園)まで搬送します。ドローンスタッフが牛丼をドローンにセットし、海上4.5km、陸上0.7kmの合計約5.2kmの航路を約10分間飛行。横須賀市立市民病院屋上にて医療従事者に届けられるという流れです。
同病院は、新型コロナウイルス感染症の入院が必要と診断された中等症の患者を受け入れる「重点医療機関」に指定され、日々多忙な上に近隣に昼食場所が少なく、スタッフは温かいランチを取りにくい状況だといいます。また、今後オンライン診療を検討していることもあり、医薬品配送の可能性も見据えた検証となりました。
エアロネクストのドローン事業
今回使用された機体には、エアロネクスト独自の機体構造設計技術「4D GRAVITY」を搭載。この技術は、独立変位して荷物を水平に保つ構造や機体の重心を最適化する荷物配置によって、飛行中の姿勢・状態・動作によらずモーターの回転数を均一にするというものです。結果、飛行速度・飛行距離・配送可能重量・配送品質のレベルアップが実現するといいます。エアロネクストは2020年8月、株式会社⾃律制御システム研究所(ACSL)と、「4D GRAVITY」を搭載した産業用ドローンの共同開発契約および「4D GRAVITY」特許群のライセンス契約を締結しました。そして2021年3月、両社は「4D GRAVITY」を搭載した物流用ドローンの最新試作機を発表。同時に、ACCESSを加えた3社で、物流用ドローン向けのソフトウェア開発を進めること明らかにしました。今回使用された機体は、このとき発表された機体とのことです。
エアロネクストは、「4D GRAVITY」という技術を強みとして、ドローンの今後の可能性を視野に捉えています。例えば、モーターの回転数を均一にすることで実現する長距離移動もそのひとつでしょう。また、ドローンの活用法としてオンデマンドの需要が増えるとも考えているようで、今回の検証はそういった構想の一部なのかもしれません。もちろん、レベル4への対応やバッテリーの最適化など課題はまだあるようですが……。このあたりのことは、先日、同社代表取締役CEOの田路圭輔氏にインタビューを行ってお話を伺っています。
このインタビューなど、エアロネクストに関するTechable(テッカブル)記事はこちらから。
PR TIMES
(文・Higuchi)