そんな総務省が、次に値下げしようとしているのが、通話料です。
通話料は、ここ10年程度、ほぼ変わらない水準で維持されてきました。ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社とも、基本となる料金は30秒22円で横並び。うっかり長電話してしまうと、積み重なってかなり支払いは高くなってしまいます。
総務省の有識者会議で問題視されたのは、この料金です。スマートフォンの登場に伴い、LINEが普及した結果、音声通話は減少しているものの、利用者数はほぼ横ばい。依然として、一定規模のニーズがあります。
一方で、大手キャリアは、5分や10分と1回の通話時間を定めた準定額や、時間制限のない完全通話定額をオプションとして提供しています。用途に合わせてこうしたオプションを選択すれば、通話料は単純に30秒22円の掛け算にはなりません。通話回数や時間が多ければ多いほど、ベースとなる料金よりは安く使えている計算になります。そのため、実態としては値下げしているとして、総務省に反論しています。
通話料金の値下げは、まだ議論が始まったばかりで、どちらの方向に決着するかは不透明ですが、ベースの料金はコストのあまり変わらない固定電話と比べても高止まりしているのは事実。諸外国と比べても、30秒22円の料金設定は割高と言えます。総務省では、値下げできない要因を探るとともに、値下げが可能になるような制度を検討するとしています。
こうした値下げの検討に先立つ形で、一部の格安スマホ事業者は、通話料の値下げに踏み切っています。
格安スマホの老舗と言える日本通信は、その1社。同社の「合理的20GBプラン」や「合理的みんなのプラン」には、月70分までの無料通話がつく上に、超過した場合の料金も30秒11円と、大手3キャリアの半額に抑えられています。日本通信はドコモから回線を借りていますが、総務大臣裁定を勝ち取り、格安スマホに一律30秒15円で提供されている音声卸の値下げに成功しました。2社間の契約事項で、具体額は非開示ですが、30秒11円に設定しても損をしないレベルの金額まで下げられた可能性はあります。
もう1社、音声通話の料金を30秒11円で提供している格安スマホ事業者があります。
それが、NTTコミュニケーションズのOCNモバイルONE。同社は、ドコモの提供するプレフィックス自動付与機能を使い、ドコモの音声通話網を迂回することで、低料金を実現しています。こうしたサービスは中継電話と呼ばれ、格安スマホ各社が提供しています。ただし、現状では、OCNモバイルONE以外だと、端末側にアプリを入れ、電話番号の頭に対応する中継電話サービスの番号をつけて発信する必要があります。
これに対し、OCNモバイルONEは、ドコモの交換機側で「OCNでんわ」のプレフィックス番号が付与され、標準の電話アプリから発信しても、自動的に中継電話サービスが適用されます。つまり、プレフィックス自動付与機能によって、常に自身で設定した中継電話サービスをユーザーに使ってもらえるというわけです。通話料が30秒11円と安いのはもちろん、OCNモバイルONEは、オプションで「完全かけ放題」(1430円)なども提供していますが、これも中継電話だからこそのサービスです。
プレフィックスの番号を交換機側で自動付与する機能は、NTTコミュニケーションズ以外の格安スマホ事業者も利用できます。現状では、まだ切り替えている会社はありませんが、今後、徐々に増えてくることが期待されます。これに対し、大手3キャリアの通話料値下げの検討はまだ始まったばかり。先に述べたように、落としどころはまだ見えていませんが、今後の議論の行方に注目しておきたいところです。
(文・石野純也)