薄鋼板製造工程における課題とは?
本開発が解決するのは、薄鋼板製造工程における危険性や作業効率の問題。ロール表面の金属粉や埃といった異物の付着は、鋼板表面に凹みなどの欠陥を発生させる要因となります。従来は人間の作業によってこれらを除去していましたが、危険性や作業効率が課題となり、自動化が求められていたのです。しかしながら、この作業はロールの据付状態や付着物に応じて手入材の角度や押し当てる強さ(力加減)を柔軟に変化させる必要があるため、自動化が難しいとされてきました。そこで本開発では、まずリアルハプティクスによってロール表面の付着物の除去作業を遠隔化し、作業者の動作から適切な力加減を数値データとして抽出。そのデータを参照することで、作業者と同様の力加減で付着物を除去する自動装置を開発しました。
リアルハプティクスは、慶應義塾大学が発明し、基本特許を有している力触覚伝送技術。アクチュエータの力加減を自在に制御することができます。力センサレスで力触覚をともなう「計測可視化・分析」「遠隔操作」「自動化」「感触の再現・VR」が可能となります。Techableでも、これまで同技術について複数回紹介してきました。同大学ハプティクス研究センターは、この技術を広く遍く世界の市場や産業界の人々が利用可能となることを目指し、日々研究を進めています。
安全で効率的な製造技術の確立を期待
本装置は既に1年以上の連続運用実績があり、人間による作業と同等の効果があることが確認済み。同時に、高い耐久性と制御システムの堅牢性も実現しています。これまで人間の感覚や経験によって判断してきた「手作業」が遠隔化・自動化されることによって、安全かつより効率的な製造技術の確立が期待されるでしょう。
PR TIMES
(文・和泉ゆかり)