こうしたことから「メモリスタ」といった、脳のように機能するシステムの研究がさかんに行われています。ノースウエスタン大学の研究者らも、人間のように関連付け学習が可能なコンピューティングデバイスを開発しました。
シナプスの可塑性を模倣
研究者らが開発したデバイスは、パブロフの犬がベルとえさを関連付けたような方法で、光と圧力を関連付けます。従来のコンピューティングシステムは、演算機構とメモリが分かれているのに対し、研究者らが研究対象とした「シナプストランジスタ」は、これらを統合したシステム。シナプスの可塑性を模倣しているので、記憶に基づき時間をかけて学習できます。
ただし従来、シナプストランジスタですら、書き込み/読み取り処理を切り離す必要がありました。こうした課題を克服するために、研究者らはトランジスタ内の導電性プラスチック材料を最適化しています。
イオンのやり取りでシナプスを再現
シナプスでは、神経伝達物質を使用してニューロン間で信号をやりとりします。シナプストランジスタでは、イオンを端子間でやりとりすることで、人工シナプスを形成する仕組みです。トランジスタがイオンのやりとりを記憶し、長期的な可塑性を発達させます。研究者らは、単一のシナプストランジスタをニューロモルフィック(神経形態学的)回路に接続し、関連付け学習をシミュレートすることによりシナプスの機能を実証しました。
圧力センサーと光センサーを回路に統合し、圧力と光という無関係な物理入力を相互に関連付けるように回路を訓練しました。訓練にあたって、LED電球からのパルス光を照射し、そのあとすぐに指で圧力を加えたのを対応するセンサーが検出します。
1回の訓練サイクルでは、回路は光と圧力の間に最初の接続を確立し、5回の訓練サイクルで、回路は光と圧力の関連付けを達成しました。
シナプストランジスタは、メモリスタで課題となっていた生体適合性を備えていて、埋め込みデバイスにも簡単に統合できるようです。また、電子デバイスに統合することで、オンサイトでの低電力の計算を可能にします。
参照元:New brain-like computing device simulates human learning/ NORTHWESTERN NOW
(文・山田洋路)