これまで赤外線センサーは、暗闇でものを見るためだけでなく、化学物質の特定や医師が血圧測定をするのに用いられてきた。既存の赤外線センサーといえば、すべての範囲の赤外スペクトルを網羅するために、さまざまな機能を組み合わせる必要があり、冷却装置が欠かせなかった。
ところが、今回の新開発のレンズはなんと、大きさは小指の爪より小さいサイズで、圧倒的な小型化に成功している。このレンズには、炭素原子が集合して薄い層を構築しているgrapheneという物質が使われている。
研究チームでは、graphene内の電荷が周辺の電流にどのような影響を与え、光を発生させるのかといったことに注目。2つのgrapheneシートの間に絶縁隔壁を配置し、上部のgrapheneシートに光が当たると、電子が上部から下部のシートへと進み、可視画像を生み出すという仕組みだ。
非常に小型なだけでなく、この赤外線センサーは、室温下で適切に動作する点も優れている。科学や軍事面での活用はもとより、スマートフォンなどのスマートデバイスや、カーアクセサリーに搭載することで、暗い環境下でも画面や視界が見やすくなるなど、さまざまな用途で役立ってくれるだろう。
University Of Michigan Infrared Sensor