一見すると、各社ともデータ容量は20GBで料金水準も近いため、横並びのようにも思える。ただ、細かく見ていくと、条件の差があり、ユーザーによって選ぶべきプランも違ってくる。その詳細を見ていきたい。
まずは金額だが、povoとLINEMOは、いずれも2480円。ドコモのahamoは2700円と少々高いが、ahamoのみ、5分までの音声通話定額がセットになっている。
povoとLINEMOの通話料は30秒20円。オプション(povoはトッピング)として音声通話定額を提供しており、5分間までの場合の料金は500円。これを足すと、povo、LINEMOはともに2980円になり、金額でahamoを上回る。280円の差だが、音声通話定額が必要という人にとっては、ahamoが有利だ。
20GBのデータ容量は3社で同じだが、データ通信に対するサービスにも厳密にいうと差がある。例えば、LINEMOはLINEのトークや通話、ビデオ通話のデータ通信量がカウントされない。これらのサービスは使い放題になるというわけだ。対するpovoには、24時間だけデータ通信が使い放題になるトッピングが用意されている。料金は200円。出張や急なテレワークなどで、データ通信量が増える日に使える便利なサービスと言えそうだ。
オンライン専用を銘打っていることもあり、3社ともショップでの契約はできない。ahamoやpovoは、専用アプリやサイトが用意される。少々毛色が異なるのがLINEMOで、同社の手続きはLINEで完結するよう設計されている。店舗が利用できないため、SIMカードは郵送になる一方で、povoとLINEMOは、eSIMにも対応。契約時にeSIMを選ぶと、アクティベーション用のQRコードが送られてくる仕組みで、iPhoneやPixelなどの対応端末で利用できる。ドコモもahamoのeSIM対応は予定しているというが、時期などの詳細は決まっていないようだ。
3社の料金プランだが、ahamoやpovoは、メインブランドのオンライン専用料金プランという位置づけなのに対し、LINEMOはソフトバンクやワイモバイルと並ぶ新たなブランドとして整理している。そのため、ahamoやpovoは、ドコモやauの端末をSIMロックの解除なく利用できるが、ソフトバンクやワイモバイルからLINEMOに移った場合はSIMロックの解除やSIMフリー端末の購入が必要になる。LINEMOは端末の販売を予定していないため、端末は別の手段で手に入れておく必要がある点には注意が必要だ。
逆に、ahamoはオススメのスマホとして、「Xperia 1 II」「Galaxy S20 5G」「iPhone 11」の3機種を販売する。これら3機種はドコモが取り扱ってきたものだが、価格が大きく抑えられておりリーズナブル。ahamoへのプラン変更やキャリア変更と同時に、端末の買い替えを考えている人には、いい選択肢と言えそうだ。ドコモで販売されている端末も利用でき、6月からはオンラインショップでの機種変更にも対応する予定だ。povoとLINEMOは、自分で別途端末を用意する必要がある。
また、ahamoやpovoはあくまでドコモ内、au内の料金プランという整理になっているため、家族割引のカウント対象になる(povoはキャンペーン)。ahamoやpovo自体への割引はないが、家族がドコモやauを契約している場合、割引の人数が増えることで、割引額がアップする。家族内で自分だけがahamoやpovoに移ることで、別の家族の割引額が落ちてしまう心配がないというわけだ。家族で同一キャリアに加入している場合に、チェックしておきたいポイントと言えるだろう。
ただし、3社ともサービスを削ってコストダウンを図っているため、思わぬ落とし穴もある。例えば、ネットワーク側で電話をかけてきた相手の音声を保存する留守番電話サービスや、かかってきた電話を別の番号に転送する転送電話サービスはその1つだ。こうしたサービスは、ahamo、povo、LINEMOの3サービスで提供されない。また、Apple Watchを主回線に紐づけ、同時に着信する機能にも非対応になる。
キャリア決済の一部に非対応な点も、注意が必要になる。例えばahamoでは、d払いは利用できる一方、「spモードコンテンツ決済サービス」が非対応。auのpovoでは、auかんたん決済は利用できるが、LINEMOにもキャリア決済は用意されていない。20GBで2480円、2700円という料金は確かに安いが、サービス面ではトレードオフになることは忘れないでおきたい。特に、“当たり前”になりすぎているサービスは、なくなることに気づきづらい。料金変更前に、本当に必要がないかどうかは、今一度確認しておいたほうがいいだろう。
(文・石野純也)