電通国際情報サービス(ISID)のオープンイノベーションラボ(イノラボ)とブリヂストンは、AIの力で「木が枯れてしまう病気」を自動診断できる技術を共同開発した。
「目視」での診断に課題
自動車のタイヤなどに使われる「天然ゴム」の市場は現在、年間1400万トンに及ぶ。世界の自動車保有台数の増加を背景に、今後も需要は伸びる見込みだ。大規模な天然ゴム農園を運営しているブリヂストンでは、農園で発生する「ゴムの木」特有の病害が経営課題になっている。特に主要生産地である東南アジアでは、根白腐病(ねしろぐされびょう)への対策が重要な課題だ。これは、放置しておくと木が枯れてしまう深刻な病害で、天然ゴム農園の生産性低下の一因となっているという。
これまでの根白腐病の診断は、熟練者が葉の付き方や色味をみて行う「目視」。そのため、スタッフ個人のスキルによって診断の精度にバラツキが生じてしまう、という課題があった。
AIと熟練者のスキルを融合
この根白腐病の「新たな診断方法」を検討するため、ISIDイノラボとブリヂストンは、インドネシア農園でデータを収集。最新の画像解析AI技術に、「熟練者の暗黙知」を取り込む手法を検証した。従来の機械学習から最新のディープラーニングまで幅広い手法を適用し、最新のAI画像解析モデルに、熟練者が捉える「葉の特徴」を学習させることで、90%以上の精度で安定的に判別をすることが可能になった。
運用の流れは以下の通りだ。まず、ドローンで農園の上空からオートパイロット撮影を行う。それらの画像をPCに取り込み、AI画像解析。その検出結果をタブレットに転送すると、「病にかかった木」の場所がアプリ地図上に表示される。スタッフは、農園でタブレットを確認しながら罹病木を特定し、処置を行う。
AIを活用した病害診断の取組みは、実際に現地で試験運用されており、ゴムの木の病害を早期に発見し対応することが可能になった。
今後両社は、品種や樹齢、季節など様々な条件で試験を繰り返し、病害診断の精度をさらに向上させ、より多くの地域での運用を目指す。またISIDイノラボは、このプロジェクトで得られたノウハウを活用し、農業以外の様々な分野でも熟練者の暗黙知をAIの力で継承させていくという。
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