こうしたなか、ヒューストン大学とトヨタ北米研究所(TRINA)の研究者らは、制限要因となっていたカソードと電解質に新たな技術を導入し、室温で動作するマグネシウム電池の開発に成功している。
電極と電解質の設計見直し
マグネシウム電池の充放電には、マグネシウムイオンの解離と移動が伴う。カソードおよび電解質で起こるこれらの化学反応が低速なのが、マグネシウム電池の性能低下につながっていた。これまでは、化学反応の速度を改善すべく、高温にする、あるいは分子間にほかの元素を入り込ませる「インカレーション」によって、マグネシウムイオンを複雑なかたちで保持するアプローチがとられてきた。
ヒューストン大学のYan Yao教授は、電極および電解質の設計を見直し、酸化還元反応自体を一新している。
室温で機能しサイクル率が向上
ヤン教授によるアプローチでは、カソード材料に有機化合物キノンを、電解質にホウ素クラスターを用いる。これにより、シンプルなかたちでマグネシウムイオンを保持しつつ、室温で機能するマグネシウム電池が実現した。ホウ素クラスターを用いた電解質の開発はTRINAの研究者によるものだが、まだ電池のサイクル率に課題があった。今回の改善により、マグネシウム電池のサイクル率が向上。マグネシウム電池は約82%の容量保持率で200サイクル以上にわたって動作し、高い安定性を示した。また、エネルギー密度に関しては、これまで開発のマグネシウム電池より2桁高く、リチウムイオン電池に匹敵するとのこと。
今後研究者らは、高性能マグネシウム電池実用に向けて、サイクル率のさらなる改善に取り組む意向だ。
参照元:Discoveries Highlight New Possibilities for Magnesium Batteries/ University of Houston