ただ、この研究領域にはまだまだ課題も多く、その1つに変更の影響が予測しづらい点がある。これまでのところ、成果を得るために試行錯誤を繰り返すアプローチがとられてきたわけだが、ローレンス・バークレー国立研究所によるAIツールの登場で、大幅な効率化が望めそうだ。
AIがメカニズムを完全に理解していなくても機能する
研究者は、ART(Automated Recommendation Tool)と呼ばれる機械学習アルゴリズムを設計。同アルゴリズムは、遺伝子やたんぱく質に変更を加えた際の結果を確率的に予測してくれて、さらには改善の方法までレコメンドしてくれる。通常、機械学習アプローチでは大量のトレーニングデータを必要とするのに対し、ARTでは少ないサンプルでも機能するような設計に。
さらには、サンプルから傾向を導き出すため、AIが合成メカニズムを完全に理解していなくても機能する。言い換えると、予測がそれほど正確でなかった場合も、正しい改善の方向性を示してくれるようだ。
バイオ燃料の生産を最大化
研究者はいくつかのテストを通してARTの機能を実証している。例えば、再生可能なバイオ燃料リモネンに関して、少数の合成成功サンプルを用いてトレーニングし、生産を最大化している。また、ホップのない酵素からホップの効いたペールエールを醸造することにも成功。このほか、酵母によるトリプトファンの生産性改善も示された。
研究者によれば、同ツールは合成生物学に機械学習を適用する最初のステップに過ぎないとのことだが、研究領域の発展を加速するのものとなるに違いない。
参照元:A machine learning Automated Recommendation Tool for synthetic biology/ nature communications