そんな状況を打破すべく、ヤフー株式会社と株式会社電通デジタルおよび株式会社パーティーの3社が警察庁と連携し、AIを活用して指名手配被疑者の現在の姿を予測するプロジェクト「TEHAI(てはい)」を始動。
2020年11月の警察庁の指名手配被疑者捜査強化月間に先立ち、特設サイトを公開し、ユーザーからの情報提供促進と啓発を強化していく。
複数のAIが9つの予測パターンを作成
2020年8月末時点で指名手配被疑者は約630名、そのうち警察庁指定重要指名手配被疑者は12名。今回は、重要指名手配被疑者のうち5名の現在の姿を予測し、特設サイト内にて公開、情報提供を呼びかけている。現在の姿の予測にはAIの画像解析・生成技術を活用。数万枚の顔写真データから加齢に応じた特徴(シワの入り方、皮膚のたるみ方など)を数万回学習し、過去に撮影された被疑者の顔写真にその特徴を適用することで予測イメージを作成する。
同プロジェクトでは、加齢変化を得意とするAIや老化前後のペア画像から特徴を抽出して変換するAIなど得意分野の異なる複数のAIを採用。被疑者1⼈あたり9つの予測パターンを作成している。
実際に予測パターンを見てみた。1998年1月に群馬県で一家3人を殺害したとされる木暮洋史(現在51歳)の過去の写真からパターンA・B・Cという予測がされており、さらにそれぞれのパターンのなかに「やせ」「ふつう」「太らせ」という3つのイメージがある。ちなみに、A・B・Cはそれぞれ面影を残すものや一部特徴を残すもの、じっくり見なければわからないものなどまったく違う雰囲気の予測だった。
情報提供しやすい特設サイト
では仮に、この予測イメージを見て心当たりがあったとして、どのくらいの人が情報提供するだろう……。なかには「めんどくさい」という理由で見て見ぬふりをする人もいるかもしれない。そこで3社は、それぞれの知見を集結し、より通報しやすい設計の特設サイトを公開。ユーザーの指名手配被疑者の認知度向上と情報提供促進を図っていく。
サイト内の5名の手配リストの写真をタップ(クリック)すると、被疑者が関与したと思われる事件の概要や身体的特徴・癖などが表示され、手配時の写真とともに先述のような予測写真が掲載されている。
サイトを開いている間は画面の下部に「情報提供」のボタンが常に表示され、直接情報提供できる仕組み。「情報提供」ボタンを押すと、対象者を選択する画面が出てくる。そこで対象者の手配写真の横の「フォームから入力」を押すと、担当する警察署の情報提供フォームに遷移し、目撃情報などを提供できるという流れだ。
なお、スマートフォンの場合は「フォームから入力」のほか担当警察署の電話番号ボタンがあり、直接電話することも可能。
近年、監視カメラなどは急激に増えたが、一番の監視の目は国民の目ではないだろうか。今回の予測イメージは現在の姿を保証するものではないが、可能性のひとつとして認識し、少し周りを意識することで思わぬ情報に出くわすかもしれない。
ヤフー株式会社