例えば、ロボットと人間のハイブリッドチームで軍事ミッションを達成するといったケースでは、人間の信頼を得やすいロボットの開発が不可欠だ。
アメリカ陸軍の研究チームは、ゲーム理論における「戦略」および「シグナリング」をもとに、協力を促進するためのメカニズムについて究明している。
アクションと感情表現の適切な組み合わせで協力が得られやすくなる
ここでいう戦略とは、「囚人のジレンマ」において協力を選択するか裏切りを選択するかなどのアクションのことで、シグナリングとは会話や感情表現などの言語/非言語表現のこと。研究の結果、適切なシグナリングにより協力を得やすい状況をつくれるが、セットとなる戦略によってその効果が変わってくることが判明している。例えば、互いに協力した後で微笑むことで、より多くの協力が得られる可能性があるが、反対に他者を利用した後に微笑めば、次の協力が得づらくなる……といった具合だ。
このように研究では、アクションと感情表現の適切な組み合わせで協力を最大化できることが示されている。
1コマあたり100~500ミリ秒で“生きている”との知覚が低下
人間に受け入れられやすいロボットの設計については、エモリー大学の研究チームによる研究も視座を与えてくれそうだ。研究チームは、人間っぽいものに対して不安な気持ちを抱く「不気味の谷」の知覚条件について、ミリ秒単位で調べている。人間の顔、ロボットの顔、人間に似たアンドロイドの顔の3種類について、アニメーション1コマあたりの表示時間をミリ秒以単位で操作した。“生きているように見える”との知覚は、1コマあたり100~500ミリ秒の範囲で急激な低下が見られたが、この現象はアンドロイドの顔のみで起きたようだ。つまり、このあたりに生き物と人工物を区別し始める境目がある。
また、1コマあたりの表示時間に加えてスケッチの細かさを操作したところ、詳細が削除されたアンドロイドの顔では、“生きているように見える”との知覚が低下するにつれて、不気味さが知覚されるようになった。つまりこの研究では、アニメーションのコマを落としたほうが不気味さが感じられやすいとの結果になった。
こういった研究内容を設計に反映させることで、より共同作業しやすいロボットが登場するだろう。
参照元:Future autonomous machines may build trust through emotion/ News Wise
Experiments reveal why human-like robots elicit uncanny feelings/ Emory News Center