そしてこのたび、ヒットソングの特徴の可視化などの技術開発に成功し、4か月程度先までの音楽トレンドが予測可能となったと発表。
これにより、レコード会社などに向けたアーティストの発掘・育成やマーケティング支援、ストリーミング事業社などに向けたプレイリストの制作支援などが可能となり、新たなサービスとして2020年9月よりトライアル提供を開始する。
楽曲を科学する
同研究で用いられた「NeuroAI」は、コンテンツ視聴時の視聴者の脳活動を予測し、その脳活動の結果ヒトがとる行動や広告視聴データなどを推定する技術。米国の人工知能学会(AAAI)にて「NeuroAI」基盤技術の論文が採択されており、動画広告においては広告効果の予測が既存の機械学習に優ることを示しているとのこと。一方「Billboard JAPAN HOT100」は、ストリーミング」「ダウンロード」「CDセールス」など8種類の指標を組み合わせ、音楽市場の実態を多角的に捉えた総合楽曲チャートだ。
3社は、「NeuroAI」と「Billboard JAPAN HOT100」のデータをかけ合わせ、音楽に対する人間の反応を科学的に把握するための研究を進めてきた。
以下、研究内容と成果をまとめてみる。
2つの目的
同研究の目的は2つ。ひとつは「楽曲を聴いている際の脳活動の推定による(楽曲の)特徴の抽出と可視化」。もうひとつは「楽曲特徴(脳情報・歌詞・コード進行)とチャートデータによる楽曲トレンドの定量把握とトレンド予測」だ。楽曲の特徴の抽出・可視化にあたり、2016年12月~2020年5月までの期間、8種類のチャートで100位以内にランクインした2185曲を対象楽曲とした。楽曲の音声から1秒ごとの脳活動を予測するとともに、音声の周波数を解析し、楽曲の特徴を抽出するという流れだ。
また、2016年12月~2020年7月の週次チャートデータ2047曲を対象に、歌詞情報、コード進行情報、アーティストの過去チャート情報を定量化し、独自のアルゴリズムを構築することで楽曲トレンドの定量把握とトレンド予測に成功している。
ユースケースはさまざま
脳情報から抽出した楽曲の特徴を定量化できたことにより、人間が感じる音楽への潜在的かつ言語化不可能な反応をマーケティングに活かすことが期待できるという。例えば、CMタイアップソングの提案やこれまで聴いてこなかったジャンルのから好きになれる楽曲との出会いをサポートするプレイリストの作成提案など。また、週単位の楽曲トレンドを定量的に把握するための独自のアルゴリズム「チャートモデル」は、過去のチャート情報を加味しているため、アーティスト知名度などの影響をある程度差し引いたうえで、どのような楽曲特徴が支持されているのかを可視化する。
例えば、実際の「Billboard JAPAN HOT 100」の2020年上半期にはOfficial髭男dismやLiSA、菅田将暉などが上位にランクインしているのに対し、楽曲特徴のみにもとづくトレンド評価ランキングでは、上記アーティストに加えてwacci、ヨルシカ、iriといった次世代アーティストたちもランクインしている。これにより、楽曲特徴によるトレンド把握の可能性が見出されたといえるとのこと。
そして、「チャートモデル」の時系列変化を「トレンドの変化」と捉え、過去の変化パターンから未来にどんな楽曲特徴が支持されるのかを予測することにも成功。
今後は、リリース曲やCMタイアップソング、リリース時に発信するプラットフォームなどの選定サポートや新人発掘サポートなどを想定ユースケースとし、レコード会社、音楽出版社、マネジメント、広告代理店などに向けた新たなサービスのトライアル提供を開始するとのこと。
なお、海外展開における海外市場のモデル化も視野に入れているようだ。
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