そんなゲリラ豪雨に関する株式会社ウェザーニューズの発表「ゲリラ豪雨傾向2020」によると、全国の7月~9月のゲリラ豪雨発生回数は約2,400回、昨年比1.4倍と見込まれている。増加するゲリラ豪雨にどう対処すべきか悩むところだ。
そんななか、ゲリラ豪雨を事前に察知し回避できそうなシステムが開発され、2020年8月25日~9月5日の期間、首都圏で実証実験が行われることとなった。
4年の時を越えたシステム
同実験を実施するのは、理化学研究所 計算科学研究センターデータ同化研究チームや情報通信研究機構 電磁波研究所リモートセンシング研究室、株式会社エムティーアイ、東京大学、大阪大学、筑波大学のメンバーで構成される共同研究グループ。同グループは2016年、スーパーコンピュータ「京」を使った解像度100mの高精細シミュレーションと、フェーズドアレイ気象レーダの双方から得られる高速かつ膨大なデータを組み合わせて「ゲリラ豪雨予測手法」を開発している。
この時点で「解像度100mで30秒ごとに更新する30分後までの天気予報」となるはずだったが、30秒以内に完了しなければならない計算に10分かかるという問題が発生し、リアルタイムに動作させることができずにいた。
そしてこのたび、2017年に埼玉大学に設置していた情報通信研究機構が運用する最新鋭のマルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)の30秒ごとの雨雲の詳細な観測データと、2019年8月にシャットダウンしたスーパーコンピュータ「京」に代わり、筑波大学と東京大学が共同で運営する最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)のスーパーコンピュータ「Oakforest-PACS」を用いて、リアルタイムで30秒ごとに新しいデータを取り込み、30分後まで予測する超高速降水予報システムを開発。
この30分後までの予測データを30秒ごとに分割して連続的に表示し、よりリアルタイムなゲリラ豪雨予報を提供していく。理研の天気予報研究のウェブページおよびエムティーアイのスマートフォンアプリ「3D雨雲ウォッチ」にて、8月25日午後2時から公開予定とのこと。
Society 5.0の実現へ
このシステム開発には、上記以外にも、 MP-PAWRの観測データを即座にOakforest-PACSに転送するデータ取得ソフトウェア「JIT-DT」 の開発や、米国国立環境予測センターの全球数値天気予報システムの予報結果を側面境界値(計算領域の側面に与える気象変数の値)とした解像度18kmから6km、1.5km、500mまでをリアルタイムに把握できる全体のワークフロー構築など、研究開発に着手した2013年10月から継続してきたさまざまな成果が集約されている。同システムは、これまで予測困難だったゲリラ豪雨などの降水リスクに対し、コンピュータ上の仮想世界と現実世界をリンクさせることでリアルタイムな予測が可能となり、超スマート社会Society 5.0の実現に貢献するものと期待が高まっているようだ。
ただし、同実験での予報はあくまで試験的なものであり、利用者の安全や利益に関わる意思決定のための利用には適したものではいとのこと。
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