こうしたAIの致命的な弱点を克服すべく、アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)の出資のもと南カリフォルニア大学、パデュー大学が連携した。差し当たって南カリフォルニア大学の研究チームは、モノポリーのルール変更に対処できるAIを開発しようと尽力している。
高度なAIセキュリティシステムもコロナを知らない
特定のタスクで驚くほどの能力を発揮するAIだが、少しでもルールが変わると一から再トレーニングが必要となる。例えば、最近のトイレットペーパーの大量注文を、あるAIセキュリティシステムがサイバー攻撃と判断。注文をすべてブロックしたという。新型コロナが市場にどれほど大きなインパクトを与えようと、AIが現象を知る由はなく、これに考慮に入れた対処は思いつかない。
同様に、現実世界にはあらかじめ予測できない要素で溢れているので、すべての前提条件をAIに教えておくことは不可能だ。これが実用的なAIの開発をむつかしくしている。
パデュー大学はライドシェアリングがテーマ
現実世界のような自由度があるモノポリーは、新ルールに対処するAI開発にもってこいのゲームだろう。研究チームは、モノポリーの標準的なルールに最適化されたAIを、勝利の条件を変更したりサイコロを追加したり……といった変更に対処できるようにしようとしている。南カリフォルニア大学がモノポリーを扱うのに対して、パデュー大学が扱うテーマはライドシェアリング。新規性を伴うリアルタイムでの条件変更に対処するAI開発が目的だ。
それぞれ限定された領域でのチャレンジに見えるが、新規ルールや予期しないイベントに対処できるAIが開発されれば、領域をまたいだブレークスルーとなるだろう。
これらの研究は、DARPAによる「SAIL-ON(Science of Artificial Intelligence and Learning for Open-world Novelty)」 プログラムの一環として進められ、2023まで継続することになっている。
参照元:Want to Teach An AI Novelty? First, Teach It Monopoly. Then Throw Out the Rules./ USC Viterbi