沖縄の海に似た環境を構築して実験
今回の実験は、東京都内のオフィスビルにおける会議フロアの一角で実施された。この実験で利用したのは沖縄産の成熟したサンゴで、アクアリウム用のサンゴライトを用いて紫外線を当てた。ライトの明るさに関しては、昼間は太陽と同程度、夜間は月明かり程度にすることで、水槽内の環境を沖縄の海に可能な限り近づけたという。また、IoT技術によって四季の変化を反映し、サンゴの採取元である沖縄の久米島近海と同様の形を実現。さらに、水温を調整しながら水流をつくることで、沖縄エリアにおける波を再現した。
抱卵を確認できたが、産卵には至らなかった
研究チームが今年5月中旬にサンゴを折って確認したところ、体内での抱卵を発見。その後、例年の産卵タイミングである6月中旬に、再度サンゴを折って確かめた。今度は、サンゴの体調悪化もあって卵を見つけられず、結果的に産卵には至らなかったとのこと。イノカでは、サンゴが産卵しなかった原因を「体調不良によってサンゴ本体に卵が吸収されたから」としている。体調悪化を食い止めるために卵を自分自身のエネルギーに変えるのは、生物ではよく見られる現象だという。
この結果をもとに、イノカは今年8月から再び実証実験を開始する予定だ。生体へのストレスを低減すべく、水槽内のさまざまなパラメータをさらに細かく調整する。また、サンゴの健康状態を判別する画像解析技術も応用しながら、産卵時期をコントロールした人工産卵の成功を目指す。具体的な時期として、来年3月の産卵確認を想定している。
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(文・早川あさひ)