同モデルは、Galaxy S20シリーズの最上位モデルで、カメラを大幅に強化しているところに特徴がある。1億800万画素のメインカメラや、光学10倍ズームが可能な望遠カメラを備えているのは、Galaxy S20シリーズの中でもこの端末だけ。5Gは6GHz帯以下のSub-6だけでなく、28GHz帯を利用する超高速なミリ波にも対応する。
まさに、サムスン電子の粋を集めたスマホだが、このモデルは国内キャリアではau限定。KDDIは、「Galaxy Fold」や「Galaxy Z Flip」を導入してきた。5G時代に向け、特徴的な端末を多くラインナップするサムスン電子との関係を強化している格好だ。Galaxy S20 Ultraも、その延長線上にある端末と言える。今回は実機を借り、その実力を確かめてみた。
光学10倍ズーム、最大100倍ズームに対応した強力なカメラを搭載
Galaxy S20 Ultraの魅力は、やはりカメラに集約される。1億800万画素のメインカメラはとにかく精細に撮ることができ、人物、風景、料理など、何を撮ってもバランスよく仕上がる。標準では、1200万画素相当のサイズで撮影されるが、これは、ピクセルを9つ束ねて感度を上げているため。1億800万画素そのままで写真を撮ると、画像サイズが大きくなるうえに、明るさも落ちてしまうため、このような処理をしているようだ。
もちろん、より精細な写真が必要な場合は、簡単に1億800万画素モードをオンにすることができる。屋外での撮影など、光量が十分で、かつ後から切り出して使う可能性があるようなシーンでは、1億800万画素モードをオンにしておいてもいいだろう。以下に掲載した写真が、そのモードで撮った写真だが、拡大すると、てんぷらの衣のディテールまでしっかり表現されていることがわかる。
1億800万画素で撮影すると、ファイルサイズが10MBを超えてしまうのが難点。上記の写真も、16MB超と非常に大きく、SNSにアップロードするには時間がかかってしまう。
その意味で、この端末が5Gに対応しているのはある意味必然と言える。Snapdragon 865を搭載しており、処理能力も高いため、1億800万画素で撮った写真を表示しても、拡大・縮小などの操作がスムーズ。同レベルの画素数を備えた端末の中には、操作が必ずしも滑らかではないものもあるが、Galaxy S20 Ultraはしっかりバランスも考えられている印象を受ける。
暗所で複数枚の写真を合成して、明るさを上げる夜景撮影も、この端末の得意とするところ。
暗い空のグラデーションをしっかり表現できているのはもちろんのこと、明るすぎて白飛びしそうな部分まで、しっかり写し出している。HDRがかなり効いている証拠で、夜景撮影の出来栄えとしてはトップクラスのスマホと言えるだろう。
最大100倍ズームまでできるのも、Galaxy S20 Ultraの魅力のひとつだ。それぞれの倍率は0.5倍、1倍、2倍、4倍、10倍、30倍、100倍で、10倍より上は、2倍、4倍はメインカメラに、30倍、100倍は望遠カメラにデジタルズームを掛け合わせているとみられる。
0.5倍の広角では、点のようにしか見えなかったホテルの看板が、100倍だとしっかり文字まで読み取ることができる。拡大率は非常に高いが、これが手持ちで撮れてしまうのが驚きだ。写真としてはやはり粗さは残るものの、記録して残しておきたい遠くの被写体を撮るときには重宝しそうだ。光学ズームのため、10倍はかなり実用的で、画質もいい。全体的に画質が高いだけでなく、ズームも可能と、かなり汎用性の高いカメラに仕上がっていることがわかる。
万人受けしないが先進層に刺さる1台
ハイスペックなカメラがある一方で、スマホとしては222gと重量級。手に取ったときにもそのズシリとした重みが伝わってくる。カメラユニットがかなり大型なのに加え、本体も厚みがある。手になじみやすいスマホを求めている人には、あまりお勧めできない。また、海外発表から国内導入までを急ピッチで進めたこともあり、おサイフケータイにも非対応だ。モバイルSuicaやiD、QUICPayなどを常用している人が、メインのスマホにしづらいのは難点と言える。
5G時代に、KDDIとタッグを組んで、先進的な端末を次々と日本市場に投入するサムスン電子。Galaxy S20 Ultraも、価格が16万5980円と高額で、なかなか手を出しづらいのは正直なところだが、カメラ機能はトップクラス。万人受けはしないかもしれないが、先進層には刺さる1台に仕上がっている。サムスン電子の技術力をアピールする効果は高く、ブランド力の向上にも寄与しそうだ。
(文・石野純也)