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Start Up 無人のセーリングヨットで水素を運ぶ! エバーブルーテクノロジーズの挑戦

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無人のセーリングヨットで水素を運ぶ! エバーブルーテクノロジーズの挑戦

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環境規制が強くなる昨今、世界的に電気自動車(EV)志向が高まっている。

この流れに対して多くの人が諸手を挙げて賛成しているが、果たしてそこで必要となる大量の「電気」はどうやってつくり出すのだろうか。

この問いに対して、欧米では「太陽光」がひとつの解となっている。翻って土地面積の狭い日本では、太陽光パネル設置に森林伐採をする必要がある。これでは元も子もない。

四方を海に囲まれた日本が有効活用すべきは、やはり“海洋エネルギー”ではないだろうかーー。

今回は、帆走の自動化技術を通して持続可能な社会の実現に貢献するエバーブルーテクノロジーズ株式会社の代表・野間氏にインタビューを行い、同社が取り組む挑戦について話を聞いてきた。

大航海時代からある「帆船」を再設計

ーー持続可能な社会を実現するため、御社では海洋エネルギーの活用に着目しているとのことですが、その上で事業領域を「帆船(セーリングヨット)」に定めたのはどのような背景があったのでしょうか。

野間:いま、国土の狭い日本において、太陽光に代わる波力や潮力、地熱といった海上のリニューアブルエナジーの活用が注目されています。しかしこれには課題があって、海の上でつくり出した電気を陸地に運ぶ手段がないんですよね。

この問題に対して、電気を一度水素に変換して運搬するという方法があるんですが、この運搬にガソリンを使ったタンカーを使うとなると、運搬コストが高すぎるから割にあわないんです。というか、そもそも化石燃料の代わりとして海洋エネルギーを活用しようとしているのに、その運搬でガソリンを使っていたら本末転倒ですよね。

ーーでは海洋エネルギーの活用には、エコで低コストな水素運搬が必要になるということですね。

野間:おっしゃる通りです。そこで目をつけたのが「帆船」。

人は大航海時代の頃から、風の力だけで海を自由に移動して交易をしていたんです。今あるテクノロジーを活用すれば、無人で帆船を操作して運搬に利用することもできるんじゃないか、と。

つまり「海洋エネルギーの活用」においてボトルネックとなっていた「水素の運搬」という問題を解決するために、自動操船できるヨットをつくっているんです。

ーーなるほど。無人でヨットを操作するというのはイメージしづらいんですが、どのような仕組みなのか簡単に教えてもらえませんか?

野間:言ってしまえば海上版ドローンですよ。仕組みはほぼ同じで、GPSを使って座標を頼りに指示しているんです。

制御ソフトウェアは、ドローン用のオープンソースをもとにしてカスタマイズしています。風をどう捉えるか、みたいな概念は帆船ならではなので。

ーー先日のリリースには、自動操船と自律航行テストに成功したと書かれていましたよね。

野間:はい、帆船型ドローンの実証機「Type-A」の開発において、海上での自動操船、長時間自律航行に成功しました。

今回の実証テスト成功を受けて、今後は漁業分野や海洋調査分野での活用を予定しています。

活用場面は魚群探索から水上都市まで

ーー帆船型ドローンを活用して取り組む領域は、エネルギー分野ではないんですか?

野間:目指しているのはエネルギー輸送の分野です。ただ、この分野はスタートアップがいきなり参入していくには事業規模が大きすぎるんですよね。

航行距離も非常に長くなりますし、高い安全性も求められます。船の大きさも必要になります。なのでこの分野は少し先の話になるかなと。

現段階の帆船型ドローンだと載せられるモノの重さも限られるので、まずは「情報」を運ぼうということになりました。

ーー具体的にはどのような情報を扱うのでしょうか。

野間:例えば、巻き網漁とかですね。今って探索船に魚探を載せて人が魚群を探しているんです。で、魚群が見つかったらそれを仲間に伝えて巻き網する、みたいな。

こういった業務を無人帆船で行うことで、人件費もそうですし、ガソリン代とかも削減できますよね。

あとは海洋調査の分野だと「詳細海底地図」を作ろうと思っていて。というのも、漁業関係者に話を聞いていると、魚の位置も大事だけど、それ以前に海の中がどうなっているのかわかっていないという問題があったんです。定置網を張るときにも、だいたいのカンで降ろしているらしいんですよね。

まずはそういった領域から取り組んでいきたいと思っています。

ーーではまずはそういったところから事業を展開し、長期的にはエネルギーの運搬を、ということですね。

野間:そうですね、長期的にはエネルギーの運搬だけではなく人の運搬も目指しています。

そうしてエネルギーや人を低コストで運ぶことができるようになれば、「水上都市」みたいな話もかなり現実的になると思うんです。

いまでも例えば無人島に住みたい人って結構いるんですよ。でもそれができない理由は島に電気がないし、移動にかかるコストが高いということ。そういった問題が解消されればきっと無人島に住みだす人が出てくると思います。

自分たちがそういうトレンドをつくり出したいですね。

野間恒毅(のま・つねたけ)
上智大学院電気電子工学専攻博士前期課程修了。ソニーにてインターネットサービスの企画開発・運営を担当。News2uのCTOなどを経て2011年、ウェブシステムの企画開発を行うワンダーツー株式会社を設立。2016年よりMistletoe Japanにて教育やサステナビリティ分野を担当。その中で自ら発案した洋上の再生可能エネルギーを無人帆船で活用するプロジェクトのため、エバーブルーテクノロジーズ株式会社を設立、代表取締役に就任。

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