今回の手法確立は画期的
今回の研究成果は、今年1月に神経学の専門学術誌『Brain Communications』に投稿され、5月27日付でインターネット上に公表されたもの。小野田教授は今年3月まで島根大学に所属し、この研究を行っていた。健康な人とアルツハイマー病患者の脳のMRI画像に加え、その後の発症状況を追跡したデータを使用。深層学習による解析を行い、経年での発症確率を予測することに成功した。
過去、アルツハイマー病を発症しやすいタイプの判定に関する研究はあったが、今回のように、個人の発症確率を経過年数ごとに予測する手法を確立したのは画期的だという。
研究の詳しい内容とは
研究の解析対象は、アルツハイマー病に関する公開データベースと、島根大学医学部神経内科の外来患者をあわせた2,142例。ベースライン時に脳のMRI構造画像を測定し、一定期間ごとに、アルツハイマー病に進行したかどうかのフォローアップデータを取得した。アルツハイマー病は脳の萎縮を特徴のひとつとしているため、解析にあたっては、脳のMRI画像から領域ごとの灰白質容積を算出し、これを特徴量として設定。深層生存分析という機械学習の手法を用いて、経過年ごとの発症確率を推定した。
その後、「Concordance index」という指標でモデルのパフォーマンスを評価。研究チームの開発した手法では、その指標が最大で0.835だった。これは、高齢者をランダムで2人選んだとき、どちらが先にアルツハイマー病になるかということを、83.5%の確率で正答できるという値に相当する。
成果について、小野田教授は「個人レベルで、アルツハイマー病の発症リスクを将来の経過年数ごとに評価できるようになった。今後は、研究成果を医療などへ応用することも考えられる」とコメントしている。
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(文・早川あさひ)