町をデジタルで複製
VR(virtual reality)の中に複製されたその町は、見た目がリアルというだけでなく、空間構造を定量的に解析するスペースシンタックス理論が生かされている。空気の質、交通の流れ、出歩く人の多さやその流れなど、生活に関わりのある様々なデータが織り込まれており、例えばどこかに移動したいとき、最も短時間のルートを正確に予測できるそう。また、カーナビなどにも利用されている地理情報システム(GIS/geographic information system)が組み込まれているほか、時間によって変化する風向きや、それによって変わる町の各所での排ガスの濃度などもリアルにわかるとのこと。
スーパーコンピュータで作られたこの町にはスマートフォンアプリが付属しており、住民たちはそれを使い、様々な場所の雰囲気や、直感的な印象をインプットできる。開発したシュトゥットガルト大学の研究者は、こうすることで「町に命を吹き込んだ」と言っている。
より良い都市計画のため
こんな町を作った目的は、都市計画の専門家たちを助けるためだ。開発をリードしたシュトゥットガルト大学ハイパフォーマンス・コンピューティングセンター(HLRS)のFabian Dembski教授は、ニュースリリースの中でこう言う。街というものは、1方向から見て分かるものではありません。だから紙の上で都市を設計するのはおかしいことなのです。第3の次元があってこそ、空間性を持った街をよく理解できるのです。
(都市計画で)決定を下す人たちが、没入型のVRで街をリアルに体験できれば、都市デザインはもっと良くなるでしょう。私たちそうやって彼らを助けようとしています。
High-Performance Computing Center Stuttgart (HLRS)