今回、そのような自動検知の精度向上を図る目的で、既に連携があった千葉銀行に加え、三菱UFJ銀行・中国銀行・三井住友信託銀行・伊予銀行が実証実験に参加。オープンイノベーションによる実施体制を構築し、各組織のデータを互いに開示することなく、複数組織による協調学習が可能なシステムを目標とする。
これまでの経緯
近年はテクノロジーの進化や経済のグローバル化が進む一方で、不正送金や振り込め詐欺のような金融犯罪の手法が巧妙化している。こういった不正取引を検出するために、多くの金融機関ではルールベースのモニタリングツールを活用。これは、たとえば個人口座から1日に一定額以上の高額送金が行われた場合に該当口座を検出するなど、条件に合致したらアラートを出すようなツールのこと。ただし、そうした対応においては、担当者の経験への依存やコストなどの課題があったとされる。
そのため、機械学習技術を用いた不正取引の自動検知システム(AIシステム)の導入検討も進む。しかし、単独の金融機関では十分な学習データの用意が難しい。とはいえ、個人情報を含む金融取引データを外に持ち出すこともできないため、複数の金融機関が協力した学習も実現せず、AIシステムの普及は進んでいなかったとのこと。
前述のような課題を解決する目的で、NICTは独自開発のプライバシー保護深層学習技術「DeepProtect」を応用。データの機密性を維持したまま、複数組織による協調学習を可能とするシステムの構築を目指し、NICT・神戸大学・エルテスは合同で2019年2月から実証実験に取り組んできた。
今回の連携開始の概要
これまでの実証実験では千葉銀行とデータ解析を進め、実際の不正送金のうち7割以上を不正送金と正しく判定できていた例もあったという。ただし、学習データ量としては十分ではなく、精度向上のためには、さらに多くの銀行のデータが必要とされる状況だ。そこで、より多くの金融機関に対して実証実験への参加を呼び掛けたところ、新たに三菱UFJ銀行・中国銀行・三井住友信託銀行・伊予銀行の参加が決定。これにより、不正送金の検知精度を8割以上に向上させることを目指す。
今後、NICT・神戸大学・エルテスは各金融機関との連携を行い、2021年度末を目標として、複数機関による機械学習が可能なシステムを構築していく。不正送金の高精度自動検知の実現を目指す取り組みに期待がかかる。
PR TIMES
(文・早川あさひ)