伝送効率は92%
スマホ用のワイヤレス充電パッドがおなじみになりつつあるが、その欠点はスマホが静止しているときだけ機能するということ。これは、ワイヤレス充電器が、受信デバイスの磁気コイルに共振を発生させる周波数で振動する磁場を発生させて、電気を送るため、充電器と受信デバイスの距離が変化すると共振周波数が変わり、送電できなくなるという理由による。そこで、スタンフォード大学の研究者らは3年前に、受信デバイスまでの距離が変化しても送電できるワイヤレス充電器を開発した。研究チームは、充電器にアンプとフィードバック抵抗制御を組み込んで、充電器と受信デバイスの距離が変化したときにシステムが共振周波数を自動調整できるようにした。しかし、この技術はアンプ内部で大量の電力が消費され、伝送効率はわずか10%に過ぎなかった。
今回、研究チームは元のアンプをはるかに効率的な「スイッチモード」アンプに置き換えて、機能的な回路構成にすることで、伝送効率を92%に高めることに成功した。
スケールアップして、高速で走る車に充電できる可能性も
このプロトタイプは、60〜90cmの距離で10Wの電力をワイヤレスで伝送できる。また、ワイヤレス電力伝送にかかる時間は数ミリ秒(時速110kmで走る車が1,2mの充電ゾーンを通過する時間のごく一部)であることから、研究者らはシステムをスケールアップすれば高速で走る車に充電できるようになるとみている。唯一の問題は、車のバッテリーがどのくらいはやく電力を蓄えられるかということだという。研究者チームは、この充電器は安全基準に基づいて磁場を生成するため、健康に害を及ぼすことはないと述べている。当研究は、オンラインジャーナル「Nature Electronics」で発表された。
ワイヤレス充電器が高速道路に導入されるまでには何年もかかると予測されるが、倉庫や工場の床を移動するロボットや屋根の上を飛行する空中ドローンへのワイヤレス充電は近い将来、実現される可能性がある。今後の展開が期待される。
Stanford University