なお、測定データをVRに移行してシステムを開発するのは国内初の試みとなる。
実火災に近い状況を再現
共同研究開発にあたり同社は、東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター、東京理科大学、横浜市消防局と連携し、消防隊員の教育訓練に特化したVR消防教育訓練シミュレーションシステムの構築を目指す。2020年度中の完成を目標とする同システムは、VR開発環境として「Unreal Engine」を使用し、4度に渡る燃焼実験から得られたデータをVRへ移行することで構築される。そのなかで注力されるのは、温度を基軸とした熱の分布、煙の移動、火炎の挙動をリアルタイムに可視化できる技術開発だという。
同システム開発成果をもとにさまざまな現場環境を再現し、ハプティクス(皮膚感覚フィードバックを得る触覚技術)などの先進テクノロジーを駆使して、受傷事故や殉職者の減少につながる技術開発・社会実装を行っていくとのことだ。
感覚情報の訓練も
燃焼実験では、建物室内を実際に燃焼させ、温度を基軸とした熱の分布、煙の移動、火炎の挙動などを細かく測定。そのデータをもとに、時間経過とともに起こる現場の状況変化を正確に把握し、消火活動との相互作用も含めてバーチャル火災現場を再現していく。同システムでの訓練では複数人が同時に参加し、それぞれの隊員の視点を維持しながらチーム単位での活動やチームワークを確認できるようだ。また、VR空間内でのそれぞれの隊員の行動を記録し、訓練後の反省点の確認やベテラン隊員の行動の追体験も可能となる。
さらに、実火災の現場では人間の感覚器官からの情報も重要であることから、感覚再現デバイス(実際と同様な感覚を得ることができる装置)を用い、実際にどのような感覚情報を基に判断し行動しているのかなどのシミュレーションも行えるようだ。これにより、感覚情報から得られる状況判断のコツや非言語的なノウハウを抽出し、心理的および医学的観点からの影響についても研究を進めるという。
火災現場では経験値が重要になる場面も少なくない。しかし、2018年度の全国消防長会の調べでは、消防隊員の割合としてベテラン隊員数が若年層の隊員数を下回っていると判明。また、火災件数は毎年6%から8%程度の減少傾向にあり、現場での経験が積みづらいのが現状だという。こうした隊員の経験不足を補うべく、同システムの研究開発がスタートしたのだ。
同システムを活用すれば、安全に経験値を積むことができ、消防活動の質の向上や受傷事故・殉職者の減少へとつながるかもしれない。
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