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電動キックボードのシェアリングサービスは、どうすれば日本で使えるようになるのか

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「ラストマイルモビリティー」として欧米で流行している電動キックボードのシェアリングサービス。「Lime(ライム)」や「Bird(バード)」といったサービス名は、聞いたことのある人も多いだろう。

一方日本では、モーターを内蔵する電動キックボードは原動機付自転車の扱い。誰でも気軽に利用できるシェアリングサービスを提供するため、各社実証実験に取り組んでいる。

では、その「実証実験」はいつまで行うのだろうか。そもそも、その実験は何を目的としているのだろうかーー。

そんな疑問を解消するべく、株式会社Luupの代表・岡井大輝氏にインタビューを実施。同社は電動キックボードをはじめとする電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを運営する企業だ。

どうすれば安全性を証明できるのか

ーー御社では、電動キックボードをはじめとした電動マイクロモビリティの安全性を検証するため、日本各地で実証実験を実施してますよね。その具体的な目的について伺えますか?

岡井:僕たちが実証実験を行う目的は大きく3つあります。

まず1つ目は「機体の安全性の確認」。「電動キックボード」はこれまでなかった新しい乗り物なので、数千人に乗ってもらうことで、安全な乗り物かどうかを確認しています。

乗りやすさや操作性など、試乗した方々から意見をもらうことで機体をアップデートしていくんです。

2つ目は、「関係者全員の安全確認」。乗っている人はもちろんですが、その隣を走る車や、警察や自治体など、関係者全員に受け入れられるものなのかどうかを確認しています。

そして3つ目は、「街の課題把握」。エリアによって移動に関する課題は様々なので、電動マイクロモビリティを受け入れてもらうために、それぞれのエリアのニーズをしっかり把握する必要があるんです。

ーーなるほど。安全の確認というのは定量化しづらい部分だと思いますが、どうなればその確認が取れるのでしょうか。

岡井:これが結構難しい話なんですよね。

そもそも私たちが目指すのは、誰でも気軽に電動マイクロモビリティを利用できる世の中。しかし現時点では電動キックボードは原付としての扱いです。

これを誰でも気軽に利用できるようにするためには、その安全性や利便性を社会にしっかりと伝える必要があります。

しかしおっしゃる通り、それを証明するのは非常に難しい。現時点では「これをクリアすればOK」という線引きはありません。

どのような機体で、どのような利用方法なら安全なのか、というのを実証実験を繰り返しながら関係省庁や自治体などと議論している、というのが現状です。

Limeにもトヨタにも、勝とうと思っていない

ーー米国の大手サービス「Lime(ライム)」も日本に参入してきていますが、それについてはどのように考えていますか?

岡井:大前提、電動キックボードという新しい乗り物を用いたサービスを世界で成功させている企業が日本に参入してくるのは、業界全体を盛り上げていくという意味では、とてもありがたいことだと思っています。

その上で、Limeさんとは強みが違うかなと思っているんです。機体の知見や資金力という面ではLimeさんのほうが強い。一方で私たちは、自治体との連携が取れていて、エリアごとのニーズも知っている。

これが他の業界であれば、ブランド力や資金力のある企業が選ばれるかもしれませんが、電動モビリティのシェアリングサービスという業界に限ってはそうならないんじゃないかなと。

どちらをその町のインフラにするかという判断をする際には、より安全が担保できて、何かあったときに対応できる信頼がある企業が選ばれると思っています。

それに、今でこそ実証実験のために自社で機体を製造していますが、最終的には他社の機体を用いてシェアリングサービスを提供する可能性もあるかもしれません。

ーーLUUPはインフラとしてのサービスになる、と?

岡井:そうですね。アメリカとかだと、電動キックボードのシェアリングサービスが普及してきて、今ではBMWやフォード、フォルクスワーゲンなどいろんな企業が電動キックボードを製造しているんです。

もし日本でこのサービスが普及すれば、同じようにトヨタさんなどの日本のメーカーが作り始めるのかなと。そうなれば、トヨタさんの安全生産ラインと経験で作ったモビリティほうが安全で高性能なのは自明。

僕たちは、そうなった時にいろんな電動マイクロモビリティを使うためのインフラサービスを作りたいんです。

なので、Limeさんなどの海外のサービスや日本の大手メーカーなどとは戦うのではなく、協業して一緒に良いサービスを作っていければいいなと思っています。

ーーなるほど。では最後に、現在の進捗と今後の展望について伺えますか。

岡井:そうですね、去年半年間でいろんな方の意見を聞き、町に対する解像度はかなり上がりました。実際に行ってみると、同じ「地方」と呼ばれる町でも全然違う課題があってニーズがある。

電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを普及させるためには、そういったミクロに考えて、各町に対して極限までローカライゼーションしていく必要があるかなと。

あとは、それとは別にtoBの利用も増やしていきたいと思っています。現在すでにリゾートホテルや工場、物流倉庫などに導入させていただいているんですが、今後は大学キャンパス内での利用も進めていきたいですね。

大学って生活が行われる数少ない私有地だと思うんです。授業に行く人もいればコンビニに行く人もいるし、原付や自転車に乗った人も通るし、タクシーとかバスが構内を走っている学校もあります。安全面にはもちろん配慮しながら、そういった限りなく街に近い環境での利用を増やしていきたいですね。

(文・栄藤徹平)

岡井大輝(おかい・だいき)
東京大学農学部を卒業。卒業後、戦略系コンサルティングファームに参画。
その後、株式会社Luupを創業し、主婦や元介護士がスポットで家庭の介護活動をお手伝いする介護士版Uber事業を立ち上げるも、日本の現状の交通インフラがCtoCに不向きであることを背景として撤退。
その後、今後の日本に必要な交通インフラとして、電動キックボードをはじめとする電動マイクロモビリティのシェアリング事業を開始。

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