カリフォルニア大学バークレー校とスタンフォード大学の研究者は、アルゴリズムによるリスク評価ツールが、刑事司法における正確な意思決定をサポートできることを示した。
「The limits of human predictions of recidivism(人間による再犯予測の限界)」との論文がScience Advancesに掲載され、アメリカ科学振興協会(AAAS)の年次総会にて発表。今後の刑事司法の枠組みに、広く影響を及ぼしそうな内容となっている。
・評価ツール「COMPAS」にデータセットを追加
研究者らが用いたのは、いわくつきの評価ツール「COMPAS」だ。被告人の年齢や性別、過去の犯罪歴から再犯を予測するこの評価ツールは、2018年にダートマス大学の研究者により、アルゴリズムの不正確性を指摘されている。今回の評価ツールではデータセットをさらに追加し、より現実世界に近い環境でテストされた。
アルゴリズムの不正確性が指摘された際のテストでは、人間の評価者に、各段階で評価の正誤が知らされていたがこれをなくし、提供されるリスク因子も、前回よりもはるかに複雑化している。
・評価ツールは人間の評価者よりもはるかに高い成績
テストの結果、評価ツールは人間の評価者よりもはるかに高い成績を示したとのこと。一部のテストでは、人間の予測精度は約60%だったのに対し、評価ツールでは90%近い精度だったようだ。裁判員裁判において、調査報告や弁護士や原告の主張、被告人の態度などは一貫性がなく複雑。人間にとってはこれらが無意識的なバイアスをかけるノイズになる。これに対してアルゴリズムは、データセットに偏りがなければ、より一貫した評価を導き出す。
ただ、アルゴリズムベースの評価ツールが裁判員を代替できるとしても、あくまで裁判官や保護観察官の意思決定を補助する位置づけだろう。被告人の人生を左右する最終決定に関しては、人間が責任をもって下すほうが(いまのところ)“違和感”がない。
参照元:Algorithms are better than people in predicting recidivism, study says/ Berkeley News