「『記憶』で世界をおもしろくする」というミッションを掲げるキオクシア株式会社は、AI技術と人の手で手塚治虫に挑む新作漫画『ぱいどん』を制作。2月27日(木)発売の『モーニング』(講談社)にて掲載されることが決定している。
AIの学習×人の感性
同社は2019年10月、東芝メモリ株式会社からの社名変更に伴い、「#世界新記憶」キャンペーンを始動。その第1弾「TEZUKA2020」で、AI技術と人間で手塚治虫に挑む新作漫画『ぱいどん』の制作に取り組んできた。同作品は、手塚治虫作品から「手塚治虫らしさ」を学習したAIが生成するプロット(漫画の基本的な構成要素)やキャラクターをインスピレーションソースとして、クリエイター陣が人間ならではの感性、経験を発揮し、作品として完成された。2月27日(木)発売の『モーニング』(講談社)にて掲載されることが決定したようだ。
また、「#マイベスト手塚」Twitterキャンペーンを2月7日~3月20日の期間で実施中。一番記憶に残る作品、キャラクター、思い出に「#マイベスト手塚」をつけてツイートすれば、抽選で『ぱいどん』の限定キャラクター画が当たるとのこと。
ホームレス哲学者「ぱいどん」
同作品の主人公は、2030年の東京で、進んだ管理社会に背を向ける男 ぱいどん。彼は記憶をなくしたホームレス哲学者で、小鳥ロボットのアポロとともに事件に解決すべく立ち向かうというストーリーだ。制作にあたり、手塚治虫作品の世界観・時代背景・キャラクターなどを人間が分析・データ化したものをAI技術に学習させ、生成した世界観、登場人物像、あらすじなどのプロットをもとに、クリエイター陣が発想を広げてシナリオ化したという。また、キャラクターについては、スキャンした作品データから、キャラクターの「顔」を抽出し、AI技術に学習させて生成したキャラクターの顔画像を、人間がシナリオに沿って服装などのキャラクターデザインを施して決定されたようだ。
本作品について、手塚治虫の長男であり手塚プロダクション取締役の手塚眞氏は「(AIが生成した)プロット構成要素や、キャラクター画像には『手塚治虫らしさ』が確かに存在していました」とコメントし、さらなる研究と検証が必要ではあるが、AIはクリエイターにとって心強いパートナーになり得るのではないかと期待を寄せた。
また、かつて手塚治虫の担当をしていた長崎尚志氏は、AIで手塚治虫作品を創造するということに胸を躍らせたという。同時に、あの複雑な伏線、独特のヒューマニズム、苦さの残るハッピーエンド、世界一うまいコマ割りなどを機械が理解し、表現できるのだろうかと懐疑的な思いもあったというが、「甦った手塚氏の新作を、一日も早く読んでみたいものだ」と前向きにコメントを締めくくった。
キオクシア株式会社