そこで今回、米ブラウン大学が鳥と昆虫の翼をヒントに、小型ドローンの飛行時間を2倍以上にして、安定飛行をもたらす翼を設計した。
・鳥と昆虫の翼がヒント
小型ドローンでは、境界層(翼に直接触れる空気の薄い層)が層状になることが多く、この層が翼から簡単に分離して再付着することはほとんどない。これが抗力(流れの速度方向に平行な力の成分)の増加と揚力(流れの速度方向に垂直な力の成分)の減少をもたらす原因で、特に突風などは急激な揚力変動を引き起こすため、飛行が不安定になる。
この問題を解決するべく、研究チームは鳥と昆虫の翼をヒントにして、多くの飛行機の翼に見られる前縁の滑らかな輪郭を厚くて鋭い平板に置き換えた。鳥と昆虫の翼には通常、気流の分離を促す鋭い前縁があるのだ。
「Separated Flow Airfoil」と呼ばれるこの翼は前縁で気流を分離し、後縁に到達する前に気流を再付着させることで、滑らかな揚力変動と安定飛行を達成した。
・バッテリー寿命と飛行時間を延長
空力効率の向上は、バッテリー寿命と飛行時間の延長ももたらした。研究者らは、風洞(人工的な流れをつくった施設)で分離流翼を備えた小型のプロペラ駆動ドローンを3時間飛行させることに成功。風洞は理想的環境であることから、研究チームは一般的な環境におけるプロトタイプの飛行時間は、市販ドローンの2倍以上になるとみている。さらに、分離流翼は通常の小型ドローンで使用される翼よりはるかに厚くできるため、翼の強度が増し、バッテリーやアンテナ、ソーラーパネルなどを翼に統合できる。これにより胴体サイズを小さくしたり、胴体そのものを排除できるようになると研究者らは述べている。
研究チームは当設計の特許をすでに取得しており、さらなるパフォーマンス向上を目指して改良を続けていく予定。
Brown University