次世代の太陽電池
現在、太陽電池の主流は結晶シリコンであるが、2019年には東大研究チームがNEDOの産学連携プロジェクト「ペロブスカイト系革新的低製造コスト太陽電池の研究開発」において、PSCのミニモジュールで最高変換効率を達成するなど、PSCは次世代の革新的太陽電池として注目されている。このたび同社が開発したPSCモジュール(縦30 cm×横30 cm×厚さ2 mm)は、同社開発のガラスを基板とする軽量化技術や、インクジェットを用いた大面積塗布法を活用して作製され、世界最高のエネルギー変換効率16.09%を達成した。また、インクジェットを用いた大面積塗布法により製造コストの低減を実現。さらに、大面積、軽量、高変換効率の特性により、従来は設置が困難だったビル壁面などへの設置、高効率な太陽光発電が可能となる。
多様な設置形態で新市場を開拓
結晶シリコン太陽電池は、国内においてメガソーラー、住宅、工場、公共施設など一定の市場を確保しているが、さらなる普及拡大と新規市場獲得のためには太陽電池モジュールの軽量化、大面積化技術が必要だという。そこで、発電層を含む厚みが結晶シリコン太陽電池の1/100程度しかないPSCが注目されたのだ。結晶シリコン太陽電池よりも確実に軽量化できるため、建物壁面への設置や、透明電極を用いて窓への適用など、多様な設置形態が可能となり、ネット・ゼロ・エネルギービル(ZEB)の普及への寄与が期待されている。また、太陽電池モジュールの基板へ直接層材料を塗布できるため、従来より制作コストが抑えられるのも魅力だという。
一方で、エネルギー変換効率に関しては、小面積セルであれば25.2%と結晶シリコンに匹敵する高効率が達成しているものの、大面積の場合は均一に製膜することが困難であったため、変換効率が大きく低下する傾向にあった。
この課題を解決したのが同社の大面積に精細で均一な層材料の塗布が可能なインクジェット法、大面積塗布法である。同社のインクジェットを用いた塗布技術をベースにPSCモジュールの基板への塗布用インクの濃度、塗布量、速度などを調整する技術により、世界最高のエネルギー変換効率16.09%に達したのだ。
なお、同社は2020年1月20日~22日の期間につくば国際会議場で開催されるIPEROP20にて、同成果を発表するとのこと。
今後PSCは、ペロブスカイト層材料改善により結晶シリコン太陽電池なみの高効率達成と、プロジェクトの最終目標であるモジュール生産コスト15円/Wを推進し、新規市場での実用化に向けた技術確立を目指すという。
パナソニック株式会社